イベント紹介Event Information
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ギャルリー東京ユマニテにて、豊海健太「‐世界の音が、すべて消える時‐」が7/26より開催されます。
「画廊からの発言 新世代への視点2021」は、銀座・京橋を中心とした8画廊が各々に推薦する新鋭作家の個展を同時開催する企画です。ギャルリー東京ユマニテでは1988年生まれの豊海健太(とようみ・けんた)を紹介いたします。金沢美術工芸大学にて漆芸を専攻、2018年に博士号取得。現在、金沢卯辰山工芸工房に勤務する傍ら、岐阜県美術館の企画展「素材転生―Beyond the Material」に出品するなど、精力的に作品を発表しています。
漆黒の画面に白く浮かび上がるイメージは、砕いた卵の殻を貼る卵殻技法という漆の伝統的な手法で描かれています。画面に近づくと、点描のように細かい卵殻が並べられ、顕微鏡で見るシャーレの中のミクロの世界のように細密で有機的な世界が広がります。鏡面に磨き上げられた画面には自分の姿が映り込み、自分の中のミクロの世界を覗き込んでいるかのようです。
卵殻は細かく砕くことで細密描写が可能ですが、その微細な卵殻を貼る作業は、カルシウムの元素を構築し、新たな物質を作り上げるような感覚があると豊海は言います。微細な素材を緻密に構築することで生まれる表現は、見る人の記憶に残る美しさを創り出しています。
本展には、玉虫細工や玉虫蒔絵と呼ばれる玉虫の羽を素材にした作品も出品されます。光の加減で色合いや輝きが変化する玉虫の羽は古くから装飾に用いられてきましたが、豊海はフィボナッチ数列を応用することで、装飾的ではなく、自然が生み出す合理的で秩序立った美しさを構築しています。新作を中心に約10点展示いたしますので、ぜひご高覧いただきますようお願いいたします。
〈作家コメント〉
漆芸技法を用いた平面表現を主題に、金銀、螺鈿、卵殻等による加飾と蒔絵や変り塗りといった伝統技法を用いて、新たな平面作品の展開を目的とする。高度な技術と多くの工程を要する漆は現代の大量生産、スピード社会に逆行し、伝統文化の保持と同時に時代から取り残される危険性を孕むが、伝統と現代を見つめ、その先の新たな表現を提示したい。