イベント紹介Event Information
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LOKO GALLERYにて、益永梢子による個展「replace」が11月12日(金)から12月12日(日)まで開催されます。
益永は本展を開催するにあたり、LOKO GALLERYのビルの外観や、内部の吹き抜け構造、自然光が差し込む天窓、1階と2階の空間の差など、作品を展示する環境がどのような意図でつくられ、どのような時間を内包するのか、観察をすることから始まりました。
本展では、単体でも成立するタブローを壁面に複数積み上げ、環境と作品のスケールや形、色彩との相関関係から生まれる視覚的、心理的な効果を鑑賞体験に組み込もうと試みています。伝統的な法則に縛られない組み換え可能な絵画は、各々に再制作を楽しむ余白を与え、観る者の主体性を引き出します。益永の最新作を、この機会にご高閲いただけましたら幸いです。
私の作品の多くは絵画と彫刻を横断するような形態で、作品がおかれる環境・スペースとの関係性から思考をはじめる為、その制作方法は多岐に渡りますが、それらに共通しているのは入れ替え可能、 置換可能な性質を持った動的な絵画と言えます。
LOKO GALLERYへ初めて訪れた時、その外観に、黒く重厚な三つの箱をズラしたようなイメージを持ちました。そんな個々人の経験は、少なからず中に展示されている作品の印象にも影響すると私は考えます。明るい色彩のものはより明るく軽やかに見えることがあるかもしれないし、その逆の可能性 もあるでしょう。ひとたび身体がその建物内に入ってしまうと天井が高く自然光が入るその空間の作用で、外の様子を忘れる人もいるでしょう。個々に違う眼、体験を持っていることに加わって、毎日、毎時変化する自然光の作用により、作品の見え方はより分岐してゆくと思います。
そんな場所で、近年始めたキャンバスを積み上げて設置する作品を発表したいと思います。 床と壁、建築に依存しながら、絵画として、何かできることがあるのではないかと始めた作品からの展開です。1Fでは積み上げる設置ですが、2Fの空間では天井から積み、下がる設置に挑戦し、1Fと3Fに挟まれた、少し圧迫感のある空間をつくることで、LOKO GALLERYの外側を内部から思い出すことができたらと考えました。目の前に見えていない場所を思う契機になったり、周囲の環境の何かに気づいたり、そういう機能を持った作品をつくりたいと思っています。
私の制作では、ルールやアルゴリズムを設定してから手を動かし始めることがほとんどです。そうして、なるべく自分の身体、特に手と眼に染み付いた感覚的な独自の互換性のようなものを避けようとしています。どうやって自分で、自分とは違うものをつくり出せるのか、また出会えるのかと考えています。 また、ルール設定については、”ルールを自分で作ることができる自由”が私の思想と繋がっている実感があります。
今回のルールは、鉛筆のように接近して線を引く道具を使用する際に、必ず他の支持体の輪郭を定規のように使用するということ、そして互いの支持体を干渉しながらも個々(キャンバス・パネルごと) に独立することです。支持体(ここではキャンバスとパネル、木枠を指します)の上に描かれるのが 別の支持体の輪郭であり、今使用している支持体も、別の支持体のモチーフになりうるという、立場が入れ替わることを繰り返します。それらは相互関係で出来ており、置換可能ですが、肩透かしのような関係性もあり、特定の作品、色彩に視点が定まることを避けています。
モチーフと支持体が瞬く間に入れ替わったり、配置により異なって見える微妙な色彩を用いることで、物理的な意味以外でも動的な絵画が提示できればと思います。