※「新型コロナ感染症奈良県緊急対処措置」の延長にともない、
5月30日(日)まで臨時休館が延長となりました。このため、
特別展「生誕130年記念 髙島野十郎展 (4月17日〜5月30日)」は、残念ながら再開することなく、閉幕することになりました。
ご観覧を心待ちにしていただいていました皆様には深くお詫び申し上げます。
写実の極地、やるせない人間の息づき-
<展覧会の趣旨>
洋画家・髙島野十郎(1890-1975)は、徹底した写実による独自の画境、孤独と旅を愛した生涯を送った作家として、没後に光が当てられ、今日では幅広い人気を得ています。
本展では、2020年に生誕130年を迎えたこの作家の画業を紹介いたします。
野十郎は福岡県久留米市の酒造業を営む家に生まれ、東京帝国大学農学部水産学科を首席で卒業するも画業の道へ進みます。独学で絵を学び、渡欧したのちもパリを拠点に郊外の風景写生に取り組む日々を送り、帰国後は久留米、東京、そして千葉県柏市へと移り住み、各地を旅しながら作品を描き続けました。その作風には仏教的な思想が根ざしていると考えられていますが、野十郎はたびたび奈良にも訪れ、風景画を残しています。
本展では、代表作を含む野十郎の豊富なコレクションを誇る福岡県立美術館の所蔵作品を中心に、初紹介の作品もあわせた総数110点あまり、多くの謎に包まれながら、見るものをひきつけてやまない野十郎の絵画世界の魅力をご紹介します。
<出品件数(予定)>
作品115点+参考資料
<展示構成>
1章 青年期
野十郎の仏教的な世界への関心は、10代の作品にすでに表れており、その後30代までの作品に特徴的な、暗い色調とうねるような形態には、同時代の岸田劉生ら草土社の画家たちの影響を見ることができます。また青年期には謎めいた雰囲気の自画像を数点描いています。
2章 滞欧期
1930年に渡欧した野十郎は、パリを拠点に美術館や教会を見て回り、写生に励む日々を過ごしました。滞欧中の作品には、それまでの緻密な描写とは異なる素早い伸びやかな筆遣いが見られ、初めて見る西洋の風景を前にした野十郎の感動が率直に表れています。
3章 戦前期
帰国後久留米の生家に戻った野十郎は、庭の一角に小さなアトリエを建て、制作に打ち込みました。1936年頃に再び上京し青山に居を構えてからは、2年ごとに個展を開催するなど充実した東京時代を過ごします。終戦直前には、姉がいた福岡県八女市へ一時疎開もしますが、この戦前期には密度の濃い風景画や静物画を多数手がけています。
4章 戦後期
70代に入った野十郎は静かな環境を求めて千葉県柏市に移り、全国へ写生の旅に出かけました。戦後期の作品には、対象の細部まで緻密に描きながら構図にゆるぎない安定感がある、野十郎の写実のスタイルの完成を見ることができます。
5章 光と闇
蠟燭や月、太陽をテーマとした連作は、野十郎の画業を最も特徴づけるものです。仏教などに裏付けられた独自の思想が、光と闇という対極にある現象の追求へ導いたのでしょう。野十郎が描いた様々な光は、見る者の心の内まで照らし出すかのような静かな力に満ちています。
▼同時開催および会期中の催し
≪連携展示≫
開村記念プレ展示「なら歴史芸術文化村と周辺の歴史文化」
2022年春に開村する文化村では、文化財を未来へと伝えるための様々な取り組みを実施します。本展では、文化財模型や映像、写真パネルで文化村の魅力を紹介します。
お問い合わせ:なら歴史芸術文化村整備推進室
TEL:0742-27-8073
WEB:
http://www.pref.nara.jp/46785.htm
※会場:当館1Fギャラリー
※観覧無料
≪会期中の催し(当館主催事業)≫
◆講演会「謎多き画家・髙島野十郎について」
講師:西本匡伸氏(福岡県立美術館 学芸員)
日時:5月2日(日)14時~(約90分)
場所:当館1Fレクチャールーム(30席・要事前申し込み ※応募者多数の場合は抽選により決定)
◆美術講座「野十郎の描いた世界」
講師:深谷 聡(当館学芸員)
日時:5月23日(日)14時~(約90分)
場所:当館1Fレクチャールーム(30席・要事前申し込み ※応募者多数の場合は抽選により決定)
[講演会・美術講座の参加申し込みについて]
聴講のお申し込みは4月17日(土)からEメールまたは電話にて受け付けます。申し込み期間・方法の詳細は当館ホームページ(
http://www.pref.nara.jp/11842.htm)などでご確認ください。
◆当館学芸員によるギャラリートーク
日時:4月24日・5月8日・29日(いずれも土曜日)14時~・展示室にて
申し込み不要、開始時間に合わせて展示室前にお集まりください
※上記イベントへの参加には観覧券が必要です。
※新型コロナウイルス感染症の拡大状況により、イベントの実施・内容を変更する可能性があります。