イベント紹介Event Information
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LOKO GALLERYにて、TEPPEI YAMADAの個展「Mæssage」が3月4日(金)から4月3日(日)まで開催されます。
YAMADAは東京都渋谷区生まれ育ち、2009年に広島市立大学芸術学研究科造形芸術専攻修了後「世界構造を理解するための装置」として音や映像、動力、写真など多岐にわたる表現方法で作品を制作しています。代表作『Apart and/or Together』はグローバル社会の構造と人間の根源的な類似性を現し、2018年 ifva award(香港)でシルバー賞、2019年 Aesthetica Art Prizeで審査員特別賞、第22回文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品に選出されました。
本展覧会タイトルである「Mæssage」はmessage(メッセージ)とmassage(マッサージ)をかけ合わせたYAMADAによる造語です。会場はギャラリーの地下から2階までのフロアを使い、2つのインスタレーション作品を軸に構成しています。『The Dawn』は波の生成と消滅を繰り返すビデオ・インスタレーション、『Inside out』は心臓の鼓動を可視化・触覚化したサウンド・インスタレーションです。鑑賞者がこれらを体験することで感覚がマッサージされ、何かしらのメッセージを受信することを期待しています。
アーティスト ステートメント
「流動状態のそのつどの瞬間は、唯一無二のあり方が出現する。この世界では、ただの一度も同じ状態など生じたことがない。つまり、一回だけの比類なき出来事が、同じパターンで何度も反復されている。」(*1)
動き続ける、生成と消滅を繰り返し、一つの生命体の様に変化し続ける。それは、世界を構築する一つのルールの様なものだ。その動的現象の中をフラフラと彷徨いつつ、何か無意識と意識を繋ぐもの、感覚と思考を繋ぐものを探している。
この世界の探求を始めたのは、多分、私が物心ついた時からだと思う。誰しもが一度は考えたであろう「世界はどうなっているのだろう?」という問いが、その頃から未だに続いている。一つの方法論や視点からだけではそれを解決することが困難だった為、様々な領域に手を出し、実践と失敗の繰り返し中から見つけたことを、作品という形でアウトプットする。それにより、私自身も私の周りに広がる世界を理解しようとしている。私にとって作品は一つの「装置」であり、私や鑑賞者とこの世界の見えない何かを媒介する役割を担っている。
世界を理解する為の探求は、哲学、科学、美学を横断しながら様々な視座からアプローチする。そこから創り出されたモノは、時に互いの関係性を見えなくすることもあるが、どこかで繋がり交差する。世界の在り方は一つでは現せられない。探求の根源である自己から始まり、他者、社会、自然、宇宙と様々な領域を横断し、それらは包摂し、逆に包摂される関係を持ち、その様な入子状態の変化や逆転を伴いながら、自己へと帰還する。私やあなたの身体器官が世界の窓口であるから。
私は様々なメディアを使う。その都度、最適な素材(Medium)を探し、作品と鑑賞者を繋ぐメディアに置き換える。独自のメディアは独自の感覚、鑑賞体験を生み出す為に必要な装置(媒介物)である。「あらゆるメディアは人間のなんらかの心的ないし身体的な能力の拡張である。」(*2)とマクルーハンが言う様に、それは人間の感覚器官を延長、増幅させ、新たな感覚を生み出すのに貢献する。受容器官の視覚や聴覚、そして触覚に直接働きかける。感性へのマッサージが、何かのメッセージを届けることを期待する。
新しい時代には新しいメディアが生まれる。それは、私たちの感覚をアップデートするのだろうか。同時多発的に起こる現象を空間を越え、時間を越え享受する。秩序立てる時間もなく。誰かが秩序立てた時には、それはすでに変化している。新たなメディアにより瞬時に繋がる世界に身を置き、新たな世界を構築するのだろうか?それとも、原始的な感覚の世界に戻るのだろうか?いずれにせよ、私達は燃えて灰になり、または土に還り自然の一部となる。
*1 中村昇『ホワイトヘッドの哲学』(講談社、2007年)
*2 マーシャル・マクルーハン 、クエンティン・フィオーレ『メディアはマッサージであるー 影響の目録』(門林岳史 訳、河出書房、2015年)