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ANOMALYにて、開発好明の個展「開発再考Vol.2, 3」が2022年7月16日 (土) から8月6日 (土) まで開催されます。
「開発再考」シリーズは、多様なアプローチで膨大な作品をつくり続けてきた開発の作品ジャンルにフォーカスを当て紹介していくシリーズで、本展は2019年にANOMALYで開催された90年代の活動初期のビデオ作品群を展示し作家の核心に迫った「開発再考Vol.1」の続編です。今回、Vol.2は大学の卒業制作で発表した作品から最新作に至るまでを網羅し、照明として使用した蛍光灯が、のちに積極的な作品の一部として機能する作品に変容していく様子をご紹介いたします。初期作品の《ライトカー》(2006年) 、ロシアとウクライナの戦争を題材にした新作を含め、合わせて約20点のスケールの大きな展示でご覧頂きます。
また、Vol.3として2008年に行った展示の再現を行います。これは、開発が2004年のヴェネチア・ビエンナーレ第9回国際建築展に参加した際、展示の為に改装を繰り返してきた日本館 (吉阪隆正氏設計) を見て、現状復帰を願うプロジェクトとして建築本来の機能美を取り入れた自らの作品を提案、関係者のインタビュー映像とともに展示したものです。
白く輝く廃材の発泡スチロールでできたお茶室、1年遅れで手紙が届く「未来郵便局」など、ウィットに富み洗練された作品、鑑賞者参加型のワークショップ、時にモグラ*3) やパンダなどのゆるいオリジナルキャラクターに扮して活動する開発好明。その表現が自然体で開かれているがゆえに、私たちはともすれば無防備のまま向き合い、鑑賞する過程で作家が日々心を留める社会に対する疑問や自分の持つ固定観念に対面することになります。BankART1929前代表・故 池田修氏は、「民主主義とは、皆で手をつなぐことで生まれる運動体ではなく、たったひとりの具体的なアクション (作品) が、具体的に他人を動かし、連鎖反応を引き起こしていく現象」と述べ、開発好明のことを「ひとり民主主義者」と表現しました。コロナウィルスの流行、ロシアとウクライナの戦争など、不安定で、めまぐるしく、情報過多な私たちを取り巻く状況に開発の作品は新たな視点を導くのではないでしょうか。
海外滞在を機に、作家としての開発から日本人としての開発を問われる機会が増えました。初期から言葉やイメージに2つの意味を混在する手法を扱ってきましたが、留学を経験したことでより顕著になったように思います。
今回は、戦争をテーマにいくつか新作を加えています。ピカソがゲルニカを作ったように、世界が直面している戦争について今しかできない感覚を提示し、後世に残す意味とは何かを考え「マリウポリ」というタイトルの作品を制作しました。絡み合うコード、混ざり合う色は濁り、作品は決して美しい物として仕上がっていません。決めた色を蛍光灯使って混ぜるというルールよって制作しているため、色のコントロールは作家にはできずに出来上がった色が画面全体に広がっています。混沌とした世界を制御できない現状を顕在化し、鑑賞者それぞれの方が想い、考えられるような作品になればと思います。
開発好明 2022年6月
7月16日 (土) 18:00 - 20:00
オープニングレセプションwith ダメパンダ*1)
7月30日 (土) 17:00 - 19:00
トークイベント
登壇者:開発好明、小高日香理(東京都現代美術館 学芸員)
8月6日 (土) 15:00 - 18:00
クロージングイベント: 「開発縁日/147801シリーズ*2)」
本文註:
*1)パンダに扮した作家が決められたパフォーマンスを予定通り行わないパフォーマンス。観客の期待を裏切る行為をする自由気ままなダメなパンダ。
*2) ピカソが生涯に制作した作品は147,800点とも言われ、作品数だけでもピカソを抜きたいと思いスタートしたシリーズ。観客は用意された展示物の中から気に入ったものを持ち帰り、それを自宅で撮影した写真を作家に送ることでその写真が開発作品として認定される。
*3) 作家がモグラに扮し、地下の特設スタジオで多様なゲストを招いたトーク番組型の作品 《モグラTV》を展開するほか、様々な場所に出没してワークショップなどを行う。