イベント紹介Event Information
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H.P.FRANCE WINDOW GALLERY MARUNOUCHIにて、野口清村個展「静電気」が開催されます。
野口の創作方法の主軸には、日常の断片のコラージュがあります。その断片は誰かとの会話の中のふとした一言や、帰り道に偶然見かけた何でもないようなもの、音楽を色彩として捉えたイメージなど様々です。野口はそれを拾い上げ、スケッチもしくは記憶に留め、遊び心、あるいは悪戯を時折画中に忍ばせながらキャンバスに描き起こしていきます。時には自身の感性に任せた落書きを断片の一つとして取り入れたり、過去の体験から吸い上げたテーマを設定したりと様々な製作方法を取り入れつつ、奔放な大胆さと、創作への好奇心から独自の世界を創り上げています。
野口の作品には、文字、もしくは記号のように捉えられる不可解なモチーフが登場することもあります。これは詩や小説の一節、ただのメモや広告から抜き出された言葉たちです。文字同士を重ねたり、反転させたりを繰り返すことによって、それらは意味を投げ出した「言葉だった何らかのもの」へと創り変えられます。これらは小瓶や生物など私たちが容易に認識することができるものたちと共に画面に配置され、謎めいた秘密の言葉のような存在感を放ちます。意味を持っていたものが解体され、統合され、意味を成したり成さなくなったりする。作品の中に有意味と無意味を混在させることにより、野口は私たちの感性を揺さぶり、妖しい気配をたたえた世界に引き込んでいきます。
気まぐれに現れる静電気のように、悪戯に小さな違和感を残す野口の世界観を、どうぞこの機会にご高覧ください。
アーティストコメント:「小瓶」
今回のメインビジュアルとして作成した作品「小瓶」には、展示場所や時期、制作期間、そしてH.P.FRANCEから影響を受けたモチーフなどを取り入れました。
小瓶の背景がフランス国旗カラーであったり、作品下部の左右に東京駅をイメージした階段と、駅で実際に見かけた緑の光を描き込んだり、その下の帯には店舗のショーケースをイメージした枠を使用したりしています。その他にも、制作期間中の自分の経験、水石について話したことや、台風で切れていた電線の様子、散歩中に見た名前のわからない花などを作品に散りばめました。
小さい頃は千葉県の館山市で暮らしていました。
海の見える町でした。
よく海に出かけては、流れ着いた瓶に流れ着いたものを入れてシェイクして、また海に流し返すという遊びをしていました。シェイクされるのは海洋生物の死骸やゴミなどです。
瓶を放流した時、拾った人は瓶の中身がわかるかな?喜んでくれるかな?とウキウキしたものでした。
この作品のメインモチーフが小瓶なのは、色んな物が混ざっていますという意味です。瓶の中の顔のない人達は、シェイクされた物の所有者たちです。
3歳だったあの頃よりは、誰かに喜んでもらえそうな物が作れていると思います。少しでも楽しんでもらえたら幸いです。
−野口清村