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タグチファインアートにて、西村盛雄の作品展「忘却ー6つの種子」が10月30日から12月25日までの期間開催されます。
西村盛雄は1960年東京都生まれ、1985年多摩美術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了。国内で何度か作品を発表した後、1991年にドイツ政府給費留学生(DAAD)として渡独。1995年にデュッセルドルフ美術アカデミーでG.ユッカーによりマイスター・シューラーを取得しました。1998年から1年間、文化庁派遣芸術家在外研修員としてヨハネス・グーテンベルグ・マインツ大学造形芸術学部文化精神学科に在籍し、宗教と現代美術について研究。その後2年半にわたり同学科で講師を勤めました。2001年には"2001/2002年度クンスト・スタチオン・聖ペーター教会の芸術家"というタイトルを受け、以来ドイツを拠点に制作活動を続けています。
西村が一貫して試みているのは、蓮の葉や実などの宗教的な象徴をモチーフとした作品を制作することを通して、人間と自然、世界との関係を探っていくことです。「生きている葉を写し取る、あるいは再製するという意識はない。蓮の葉をモチーフに制作しているのは、私に輪廻や宇宙などの形而上学的な存在をイメージさせるものがあり、それを直接的にかたちにしている。つまり蓮の葉に似た私の観念の透明な凝固物なのです。」
今回は、蓮の種子をモチーフにしたブロンズ彫刻の新連作「忘却ー6つの種子」と、実際の蓮の葉を和紙に漉き込んだ平面作品「億劫(おくこう)」を展示いたします。「忘却」は、積層したベニヤ板の角を落として滑らかな曲線を得る、という独自の方法によって制作された原型から鋳造されたものです。
「忘却」は大徳寺禅の悟りの境地を表わした小堀遠州の茶室「忘筌」と、ギリシャ神話『オデュセイア』にある蓮の実を食べた時の「天国を感じる忘我の境地」とが、作家のなかで相互にあいまみえたものが制作の動機となっています。「億劫」は、「億劫相別レテ、須臾(しゅゆ)モ離レズ。尽日(じんじつ)相対シテ、刹那モ対セズ。」という大徳寺開山、宗峰妙超(大燈国師)の言葉からとられています。億劫は宇宙的な程に限りない永遠の時間を表わし、須臾
と刹那は逆にほんの一瞬の時間を表わします。宗峰妙超の言葉の意味は、「自分と神仏とは永遠に区別されるものではあるが、同時に、いつでもどこでも、神仏は自分とともにある」ということで、このことを自覚することが「悟り」であると考えられます。
タグチファインアートで5年振り8回目となる西村盛雄の個展をぜひご高覧ください。