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アートコートギャラリーでは、現代陶芸家・秋山陽の新作個展「Far Calls and Textures」が2022年5月10日(火)から6月11日(土)まで開催されます。
亀裂という人知を超えるような現象を土の表面に呼び寄せて以降、秋山は人間の足元と繋がる大地との関係性を真摯に問い、地殻、重力、振動、リズムなどをテーマに独自の造形表現を拓きました。自然の営みやものの成り立ちを見極め、内部と外部、生成と崩壊、連続と分断、遠心性と求心性といった制作課題を立てながら、秋山は土とともに万物の根源たる「かたち」を探求し続けています。
やきものの世界と出会った1970年代初頭、八木一夫に師事した学生時代より黒陶を用いた造形表現を模索しながらも、秋山が「土」と自身との接点を見出したのは、大学修了後に指導員として就職した知的障害者施設での経験からでした。粘土遊びを通して、身体的な感触を手掛かりに土と関わっていく彼らの姿に学び、また自然界にある土や岩の物質性や内に潜むエネルギーへの気づきから、秋山は土に対するイメージを広げ、造形素材というだけに留まらない未知の土との関わり合いを試していったといいます。
ある時、ミカンの皮を剥くように粘土の表皮も剥けないだろうかと、秋山は表面と内部の質を変化させるべく粘土の球体をバーナーで焙り、土の表面に亀裂が走る瞬間を目の当たりにします。そうして取り出した土の断片 -内部は軟らかく元の曲面形状を保ったまま、表面は硬くひび割れ亀裂が生じた土の際- を、平面状に展開あるいはユニットとして構成し、1980年より《準平原》シリーズとして発表を始めました。亀裂によって区切られた曲面が連続していく空間には、ゆるやかに起伏し彼方へと続く大地の様相が顕れ、秋山は土と交わる陶造形をダイナミックなスケールで生み出し、さらに深化させていきました。
本展では、焼成後に鉄粉を施す技法で制作された《準平原》シリーズの大型作品と、うつわ構造の空間関係を主眼に2000年代から手掛ける《Metavoid》シリーズより2点の大型作品をメインに据え、さらに10点の小作品がともに関係し合うように展示構成されます。土の表面に走る亀裂をとらえた秋山の目は、大地そして水平線の向こう側に広がる大きな世界へと向かい、その手で作り出される土の表情は精緻を極め豊かなエネルギーに満ち溢れています。秋山が土とともに探求する「かたち」のゆくえ、その最前線をぜひご体感ください。
◆ 関連イベント
対談 【 大長智広 (京都国立近代美術館 研究員) x 秋山陽 】
2022年 5月21日 [土] 11:00-12:30
*定員20名、要予約