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タカ・イシイギャラリーにて、石川直樹「MOMENTUM」展が2月12日(土)から3月12日(土)までの期間、開催されます。
amanaTIGPでの同作家個展「まれびと Wearing a spirit like a cloak」と同時開催される本展では、飛び込み競技に取り組む青少年たちを撮影した新作シリーズ「MOMENTUM」より11点を展示いたします。
人類学や民俗学に強い関心を寄せる石川は、世界各地を自らの足で旅しその軌跡を収めた写真作品を制作しています。大学在学中から本格的な登山活動と写真制作を始め、北極や南極といった極地を踏破し、23歳の若さで七大陸最高峰の登頂最年少記録を更新します。それから20年以上にわたって、絶えず移動を続けながら制作を続けてきました。ニュージーランドの原生林を撮影した初期作「THE VOID」や日本の島々の風土を捉えた「ARCHIPELAGO」などその稀有な写真表現に加え、旅の記録を綴った精力的な執筆活動も高い評価を受けています。
2021年の夏、石川は香川県高松市に位置する香川県立総合水泳プールを訪れ、屋外に設営された飛び込み台で練習を行う地元の子供たちの姿を撮影します。徐々に日差しが強まる早朝から日中をはじめとして、空の様相が次第に移り変わる夕刻、そして陽が失われる夜と、刻一刻と変化していく光のもと、極地で使用してきたのと同じ中判カメラによる撮影を重ねていきます。多種多様な光線がカラーのネガフィルムへと照り返しながら画面全体を満たし、そこに写し取られる真夏の大空や広大なプールの水面は、豊かな色彩に満ち溢れています。
あらゆるスポーツ競技の中でも、開始から終了までの時間が最も短いとされる飛び込み競技において、選手たちは身体の回転や捻りを組み合わせた演技の美しさと水飛沫を最小限に留める着水を競います。わずか2秒ほどで結果が決まるこの種目に取り組む被写体を目の前にして、石川は同じくシャッターを切る一瞬で画面が定まる写真というメディウムを用いて対峙します。そこでは飛び込んでは再び高台へと登り、また飛び込む練習を繰り返す若者たちと、彼らの動きに合わせて何度も撮影を行う写真家が一体化する空間が生み出され、着水の音とシャッターの作動音が交互に鳴り響きます。
シリーズおよび本展のタイトルにある「momentum」は惰性や勢い(=物理的な動き)を示すのに対して、「moment」は瞬間(=時間的な動き)を表します。両者はともに、動きを意味するラテン語「movimentum」に由来し、同一の語源を持つ二重語とみなされています。2秒という短い時間に自らの身体の運動を凝縮させる飛び込み競技の青少年たちと共鳴するように、石川は彼らの動作を様々なシャッタースピードで捉えます。露出時間の差異は石川の写真群に異なる表情を生み出し、被写体の僅かな動きをブレとして捉える一方で、肉眼では捉えきれない動きをまるで静止しているかのように固定化します。「momentum」と「moment」が共通の語源を持つように、石川の写真は大小の「瞬間」を切り取り視覚化することによって多彩な「勢い」を固定化するメディウムの本質に差し迫ります。
【新刊情報】
石川直樹『MOMENTUM(仮)』
青土社刊、2022年2月発売予定
定価: 11,000円
【同時開催】
石川直樹「まれびと Wearing a spirit like a cloak」
会期: 2022年2月12日(土) – 3月19日(土)
会場: amanaTIGP
【アーティストトーク】
日時: 2022年3月6日(日)15:00
会場: タカ・イシイギャラリー(complex665)
予約制
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