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amanaTIGPにて、石川直樹「まれびと Wearing a spirit like a cloak」展が2月12日(土)から3月19日(土)までの期間、開催されます。
タカ・イシイギャラリー(complex665)での
石川直樹個展「MOMENTUM」と同時開催される本展では、日本の来訪神行事を記録したシリーズ「まれびと」より16点が展示されます。
仮面を身につけ異形の姿をとる神が人々に畏怖の念を喚起させ災厄を祓う儀礼は日本各地に多様な形で存在しています。民俗学者の折口信夫(1887-1953)は、時を定めて異界から訪れる神「まれびと(=客人)」を迎え入れる風習が古来より民間伝承として受け継がれてきたことを指摘したうえで、来客をもてなす伝統的慣習との結びつきを論じています。年に一度執り行われるこうした「まれびと」儀礼の一部は、2018年に「来訪神:仮面・仮装の神々」としてユネスコの無形文化遺産に登録されました。
言葉以前の叫びを発しながら、異形の存在が民家の軒先に上がっていく。村の人はそれを拒絶せず、畏れながらも受け入れて歓待する。日常と非日常が交わる特殊な光景です。でもここに、日本列島に生きた人々が異質な他者とどう向き合ってきたのか、その原型があるように思う。いまは子どもに、見知らぬ人と話してはいけないなどと教えたりしますが、それとはまったく違う出会いの作法がここにあると思います
石川直樹「異形の神々から日本を視る」『アサヒカメラ』、朝日新聞出版、2013年4月号、p.185
世界各地を絶えず渡り歩きその土地固有の風景を撮り続けてきた石川の写真は、豊かな情報量を含んだ記録性を有すると同時に、独自の表現として屹立しています。北極から南極まで至るプロジェクト「Pole to Pole」や先史時代の洞窟壁画を記録した「NEW DIMENSION」、ポリネシアの諸島を巡る「CORONA」など、その活動は地球全土を縦横無尽に踏破することによって生み出されています。同作家によるシリーズ「まれびと」は、北は秋田県能代市の浅内集落から南は沖縄県の波照間島まで、時には悪天候に苛まれながらもカメラを携えて日本列島に点在する来訪神行事を10年以上にわたって撮り溜めてきた作品群です。
玄関先に突如としてその姿を現した岩手県大船渡市三陸町吉浜の「スネカ」を捉えた一枚の作品が示唆するように、石川は共同体の内部へと溶け込み神々の後を追いかけ、一連の儀礼を写真に収めていきます。そこに写し取られた、異世界から訪う「自分たちとは異なる存在」の原始的化身は、人々の豊かな想像力を反映するかのように多種多様な外見的特徴を有しています。さらに、石川の写真は「まれびと」たちがもたらす非日常空間も色濃く写し出しています。一連の儀礼が始まる前の静謐な風景の記録に加え、地域の男性たちが仮面や蓑、蔓草を纏い神へと姿を変える有様、そして地域住民たちの日常生活が営まれる空間にその姿を現し、空気を一変させる瞬間が捉えられています。本展で展示されるこうした石川の写真群では、常世と現世が入り混じる特殊な場を追体験することができるでしょう。世界最高峰を巡る登山活動や民俗学的フィールドワーク、そしてテクストの執筆といった多方面に広がる活動から培われた石川独自の多角的視座は、日本文化の根源や代々受け継がれてきた固有の精神性を浮かび上がらせます。
【同時開催】
石川直樹「MOMENTUM」
会期: 2022年2月12日(土) – 3月12日(土)
会場: タカ・イシイギャラリー(complex665)
【アーティストトーク】
日時: 2022年3月6日(日)15:00
会場: タカ・イシイギャラリー(complex665)
予約制
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