イベント紹介Event Information
※新型コロナウイルス感染拡大による社会情勢に伴い、美術館およびギャラリー施設において休廊、休館、もしくは会期の変更をしている場合がございます。詳しくは、各施設サイトをご確認いただきますようお願い申し上げます。
MEMにて、石原友明展「蠅とフランケン」が12月4日(土)から29日(水)まで開催されます。
石原は、様々な素材や手法を用いながら、長年「自画像」にとり組んでいる。それは自身の身体を、近代美術史でなぞりながら検証する試みでもある。2016年に開催した『拡張子と鉱物と私。』では、自身の頭髪をデジタル化し、抽象絵画として再構成する試みを行った。頭髪のデータに新しい身体としてカンヴァスを与えたのだ。それは、石原のもうひとつの身体である。同じ個展で、石原は3Dスキャンした自身の身体をいくつかに切り分け、各部位をスライス状の板を重ねることで立体として再構成し、その作品に《corpus》(死体、集積)という題名をつけた。
本展は、この5年前のプロジェクトをさらに発展、展開させたもので、『蠅とフランケン』と名付けられることになった。
《corpus》シリーズの新作は、3Dプリンタによって、大型化された身体のパーツが直接出力され、無造作に積み上げられる。新しく与えられた身体は、展覧会名にあるように、狂気の科学者フランケンシュタインが、人間の死体をつなぎ合わせて作り上げた人造人間の神話を思い起こさせる。その生きている死体に群がるかのように、蠅の死骸から写し取られたフォトグラムも《corpus》に寄り添うように展示される。そこに、90年代より制作している身体の延長としての革の彫刻のシリーズの《Ectoplasm》が加わる。その異形の彫刻もまた、動物の死体から採取された皮から作られるのだが、石原自身の身体に実際に「装着」される写真によってその使用方法が示される。そこでもまた死と生の接続が示される。
作品はどれも身体と死のイメージに彩られているが、石原はそれらを、近代美術史が打ち立てた美学の残滓、モダニズムの死体だという。ゾンビとしての作品が、新たな身体を獲得して自ら立ち上がるとき、未来へ向かうもうひとつの美術の地平もまた立ち上がる。