イベント紹介Event Information
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TARO NASUにて、田島美加の個展「Spectral (スペクトラル)」が2022年5月21日(土)から6月18日(土)まで開催されます。
「Spectral (スペクトラル)」と題された田島美加の個展は、TARO NASUでは約4年振りの個展である。
「Spectral (スペクトラル)」は幽霊のような、という意味とともに、光学・物理学の用語として、分光器を通して眺める虹のような光の分布図を示すこともあれば、元素や原子を対象物とする特定の分布図を示すこともある、という多義的な言葉である。日本において「スペクトラル」ではなく「スペクトル」と発音されるのは、フランス語の「spectre」に由来するからだという。
原義だけでなく、その翻訳語の成立過程も多様なこの言葉は、田島の新作の本質を伝える重要なキーワードなのである。
今回、展示されるのは、ジャカード織のペインティング「Negative Entropy」シリーズとアクリル板に着彩した「Art d’Ameublement」シリーズという田島の代表的な二つのシリーズに加え、新しい試みであるガラスの立体作品「Anima」シリーズ、そして2019年の岡山芸術交流で発表した「動く立体」ともいえる「New Humans」となる。
色彩の刺激がよびさます感情を扱う「Art d’Ameublement」や、呼吸という可視化できない対象を造形化した「Anima」はいずれも鑑賞者の見る角度や展示室内の光によって大きくその表情を変える、つかみどころのない存在であり、まさにスペクトラルの魅力を存分にたたえている。
また黒い磁性流体がアルゴリズムによって動き続ける「New Humans」は新種の生命体を実験用のシャーレのなかで覗き込むような不思議な視覚体験を提示する。これらの、時にかすかな、しかしたゆむことなくうつろい続けるイメージは、物体ではなく現象としてのアートにより強い関心を寄せる田島の作品世界の特徴を示すものであり、彼女の今後の展開を予見させるものとしても注目に値するものとなろう。