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The Third Gallery Ayaにて、渡邊耕一の個展「毒消草の夢 デトックスプランツ・ヒストリー」が2022年9月17日(土)から10月15 日(土)まで開催されます。
前作のシリーズ〈Moving Plants〉では、欧米諸国で日本原産の植物イタドリが外来侵略植物として恐れられていることを知ったことから、ヨーロッパやアメリカへの撮影を敢行。身近な植物の背後に広がる人間と植物との歴史、近代の複雑な流通やそのネットワークに行き着きました。人間が動くと植物も動くという当たり前の事実を改めて認識しました。
今回は、昆答刺越兒發(コンタラエルハ)という謎の薬草に取り組みました。「薬」としての植物の側面に着目し、世界中で取引される商品として資源化される植物の姿を浮き彫りにします。その道行は、新型コロナウィルス感染症の感染拡大に翻弄され、治療法を求め続けるわれわれの姿と重なります。
この展覧会に合わせて青幻舎より写真集を出版。ギャラリーにて先行販売を致します。人類の活動が大規模な環境の変化をもたらした「人新世」に突入する中、人間と自然の関わりから現在を生きる術を思考する文化人類学者アナ・ツィン氏の寄稿にも注目下さい。
アーティストトークイベント
日 時:2022年9月24日(土)18:00–19:30
会 場:The Thired Gallery Aya(10名のみ)/オンライン参加(YouTube生配信)
参加費:1,000円
*写真集をギャラリーのWebサイトまたは会場でご購入の方は無料
申込先:詳細は
ギャラリーサイトをご確認ください。
写真集|『毒消草の夢 デトックスプランツ・ヒストリー』
発行:青幻舎
ページ数:160ページ
価格:6,600円(税込)
寄稿:アナ・ツィン氏(カリフォルニア大学サンタクルーズ校文化人類学科教授)
申込先:info@thethirdgalleryaya.com / 06-6445-3557
オンライン購入先:
こちら
アーティストステイトメント
江戸末期の蘭方医学書にその記載を残す謎の薬草・昆答刺越兒發(コンタラエルハ)。その名前は、スペイン語の「コントライェルバ」に由来する。コントラは「(毒を)無効にする」、イェルバは「草」。つまり「コンタラエルハ」は「毒消草」だったのだ。江戸時代の蘭学書の、あるいは大航海時代の植物誌や医学書の中でコンタラエルハの痕跡を辿ると、同じ名前を持つ幾つもの植物が現れては消えていく。私が迷い込んだのは、15世紀から現代に至る500年におよぶ時間とヨーロッパ-アメリカ-アジアを結ぶ広大な空間にひろがる迷宮だった。
今は使われないこの薬草の痕跡を追う旅の中で、何百年にも渡って作られてきた毒消草を探し求める人々のネットワークの存在、香辛料や薬として世界中で取引される商品としての植物の資源化が浮き彫りになる。その過程で、人間の次元を超えて生きる生命体としての植物の姿は見失われてしまう。
旅の終わりに辿り着いた、コントライェルバが自生する森の、折り重なる形態の中で、コントライェルバの範疇を巡る絡れは文字通り解毒され、地質学的な時間が畳み込まれた、名状しがたい出来事として目の前に投げ出される。そこには感覚を研ぎ澄まさなければ聴きとることができない、言葉が無効になったのちに残る響、声ならぬ声が満ちている。