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Yutaka Kikutake Galleryにて6月26日(土)から7月24日(土)まで、ギャラリーでは初めてとなる橋爪悠也の個展「GRAVITY POINT」が開催されます。
橋爪悠也は、1983年岡山県生まれ、現在は東京を拠点に活動しています。単色で彩られた地を背景に、一粒の涙が目から零れ落ちる瞬間を日本のアニメ的な描画方法によって描いた一連の作品シリーズ「eye water」によって近年注目を集めるアーティストです。本展は初めての試みとなる立体作品に加え、アクリル絵画作品によって構成されます。
幼少期より描くことや作ることが好きだったという橋爪悠也は、専門学校を卒業した後、アウトドアブランドでの仕事を通じてブランドやプロダクトの在り様について学び、また、独学でイラストやデザインの技術を身につけた後は、PR部門で仕事をしながら広告デザインや店頭でのプロモーションマテリアルの制作などを行っていました。その仕事を退職した後、改めて独学で試行錯誤を繰り返しながら画業を深めつつ、自身の作品を制作していくことを志します。その後、カルチャー誌より依頼された作画なども少しずつ行うようになりながら、自主企画の展覧会で作品を発表するにいたりました。
それまでの活動は、橋爪が生まれた1980年代には隅々にまで行き渡っていた現代社会の大きな特徴である、完成度の高い人工的なシステムのなかのオリジナリティの不在性を作家に痛感させました。それぞれの事象が持つ思想や固有の事物のユニークさは、発表されると同時に瞬く間に様々な方法でシェアされ、社会的潮流へ転じていくものの、背景にあるオリジナルの重要さが説かれることは決して多くはありません。SNSを中心としたここ10年ほどの情報公開・交換のシステムは、そうした傾向をより強くしながら、日々新たな環境を強力に生み出しているといえるでしょう。
こうした状況下で橋爪は、オリジナリティの不在を逆手にとるように、架空性・匿名性を徹底させた作品の制作をはじめ、2016年に開催した初めての展覧会では、実際には存在しない新種の植物を発見するという架空のストーリーをベースにした、ユーモアを感じる映像やイラストを含んだインスタレーション作品を発表します。
同時に、幼少期より触れ続け、その丸みを帯びた造形に惹かれていたというドラえもんをはじめとする藤子・F・不二雄の描写を参照しながら人物や動物の姿を描いた作品を発表します。いかにして虚構として完成度の高い藤子・F・不二雄の作品を生み出すか、ということを着想源に制作された作品群は、当初はシルクスクリーンで制作されていましたが、発表を重ねながら徐々にアクリル絵具も用いられるようになり、描写においても涙という象徴的なものや細部の描き方において橋爪悠也ならではの要素を増していきました。そこには、虚構とともにオリジナルとの間に生じるズレの体験をいかにして組み込んでいくのかという新たな側面も垣間みられるようです。
本展で発表される最新作は、アニメ的な描画方法を用いた人物や動物をモチーフにした作品ですが、これまでの四角形の支持体を用いて静止画のように作られた作品とは異なり、動的な要素が加わり、前後の場面を想像させるようでユーモラスな印象を与える作品です。ある種のノスタルジーを醸し出す図像でありながらも、細部の要素によってクリシェを異化していく魅力を湛える橋爪悠也の最新作を是非ご覧ください。本展で発表される立体作品は、QUEL(
https://quel.tokyo)との共同プロジェクトとして制作され、限定エディションによるマルチプル作品も発表予定です。
なお、本展で発表される「GRAVITY POINT」の作品シリーズは、展示作品を入れ替えながら岡山市へも巡回予定です。詳細については決定次第、巡回展の会場よりご案内予定です。