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ユカ・ツルノ・ギャラリーにて、松川朋奈の個展「My flower will never die」が1月29日(土)から2月19日(土)まで開催されます。
約2年ぶりとなる個展では、親子の関係性を子どもが母を眼差す視点を含めて描くことで、母親という立場を再考するとともに、その関係性に縛られることない解放的なあり方を表現した新作を発表します。
松川は、同世代の女性や自身と同じ状況を生きる女性へのインタビューを重ね、そのなかで印象に残った出来事やフレーズを絵画のタイトルや場面として選び、日常の痕跡や仕草に表われる人間の内面や関係性、またそこに生まれる葛藤や願いを表現してきました。クロースアップされ写実的に描かれた日常の一場面や事物は、光の劇的な効果を用いることで静かに佇みながらも際立つ印象を残します。松川が年齢を重ねるたびに自ずとその表現する主題は変化してきており、近年は、初期作品に登場していた「若い女性」たちが「母」へと変わっていったり、身体の老いを身近に感じるようになったり、年齢とともに変化する女性たちの不安や痛み、弱さといった複雑な内面を受け入れ、肯定するような方向性へと作品を変容させてきました。とくに、シリーズ作品《Love Yourself》(2018年〜)は、自身も含め、親として生きる女性が直面する重圧や社会的偏見に押し潰されることなく、「自身を愛すること」を積極的に見出してくための強い願いが込められています。
しかしながら、《Love Yourself》を始めて数年が経ち、大人へと成長していく子どもと接するなかで、自身が幼少期に抱いていた母に対する孤独や不安といった感情を、自分の子どもも経験しているのではないかという疑問を持つようになったと言います。最近のインタビューでは、女性たちに「母との思い出」を聞くことで、母親として抱える一方通行な葛藤や困難だけでなく、子どもたちが母に向ける眼差しを、その関係性のなかにもう一度回復することが意図されています。
そのようなインタビューをもとに、新作では、母-子という連続する関係性や、親子の間に呪いのように付きまとう「連鎖」について見つめ直し、そこから母の立場や存在を再考することが目指されています。この連鎖は、目に見えない孤独や愛着の不在、虐待問題から、過剰な愛や期待に縛られ「所有物化」してく子どもなど、様々な形で母-子の社会的役割や重圧として植え付けられ、再生産されてしまう可能性を持っています。このような決して容易には断ち切れない連鎖を踏まえ、子どもが母を眼差す視点を取り入れることは、母という立場にいながら「娘として母を殺す(乗り越える)こと」であり、また、一個人としての関係性を築くきっかけや、自分を解放するための一つの過程だと松川は考えています。