イベント紹介Event Information
Yutaka Kikutake Galleryでは1月11日(土)から2月8日(土)まで、松?友哉による東京では初めての開催となる個展「トリ抜け」を開催します。
松?の絵画作品は、自身によって形作られた厚みをもった石膏に描かれます。「空間にひそむリズムやその状態を視覚的に表す」ことに興味があるという松?の作品は、意識的・無意識的な筆跡や即興的な動作を重ねることで制作されますが、空間のリズムは留まることがないという作品が志向することとは相反する事実によって、作品が矛盾するふたつの世界を共存させるような場となるのです。
絵画はある奥行きをもった世界であり、絵画空間と呼べるものは確かに存在していますが、一方では、それは石膏と絵の具からなる物質的な塊であるとも言えます。いびつな形状の石膏を支持体に選び、さらにそこに穴を穿つことによって、空間と物質というともに多次元的な要素を操作しながら、いかにして両者のハーモニーを導き、絵画を生み出すことができるのか? それは松?の試みの核心であると言えるでしょう。
本展のタイトルである「トリ抜け」は石膏に開けられた穴に松?が与えた呼び名です。それは例えばバーネット・ニューマン*が自身の絵画に配した縦に伸びた線をZip (ファスナーやチャックとともに郵便番号の意味もある)と名付けたように、自身の試みに呼び名をつけることで、作品世界に異質な物語を導入しようとした意図が垣間見られます。
松?が名付けたトリ抜けという言葉には、‘通り抜け'、あるいは‘飛び抜け'に近い響きがある一方で、住処の出入り口となる丸い穴を持つ鳥の巣箱、またはトリという判然としない何かが抜ける穴を連想させるなど、それは様々な詩的な解釈に開かれた絵画の出入り口のようでもあり、その向こう側には未知の空間(絵画の本質)を想像することもできるようです。
*バーネット・ニューマン(1905年〜1970年)
抽象表現主義を代表するアメリカの画家。巨大で平面的な色面のキャンバスに垂直線を配す独自のスタイルで知られる。