イベント紹介Event Information
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この度、LOKO GALLERYでは木村萌による個展「生地の庭」を開催いたします。本展は、昨年春に東京藝術大学大学院を卒業してから木村にとって初個展となります。
木村の絵画には、物体として現実世界に存在していながら、それを指す名前が浮かばないものが登場します。それは針金や木片であるように見えるのですが、すぐに何かの用途に当てはまらない、どこか宙ぶらりんな存在たちです。しかし彼女は、そのような存在に愛着を持って“ドウ”と呼び、絵画の中に独自の生命体として描きます。支持体は木枠に布を糊でピンと張り、カンバスに透過性を持たせることで作品に生き生きとした透明感を与えながらも、光の陰影がもたらす幽玄の世界を引き出そうとしています。
木村は大学院時代に油画技法材料研究室に所属し、ベトナムではシルクペインティングの技法を学びました。布に染めるように描く技法に日本的な空間感覚に近いものを感じ、興味を持ち始めたと言います。本展は、2020年「神山財団 第6回卒業成果展」にて大賞を受賞した作品をさらに発展させた新作を発表いたします。瑞々しい感性に溢れた木村のデビューをお見逃しなきよう、ご案内申しあげます。
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ドウは生地であり、代入される形である。
名前もなく、素材のままの存在は、あそびのある空間で静かに佇んでいる。
存在の拠り所を求め、形作っていく。
机の上で木や石、ビニール、針金などを組み合わせていく。
光が当たり、暗がりの中に溶ける。不確かな存在に奥行きが生まれる。
透ける布は、もともと絵画が持っている平面性と、木枠に布が貼られているという物質感を強く意識させる。
布の内側まで光を取り込むことによって、時間の移り変わりに従って色彩が変化し続ける。
その不安定で実態のあるようなないようなつかみどころのなさに美しさを感じる。
視覚は描かれた像と共に壁や木枠を捉える。日の光を受けて変化する。
像は曖昧に透けるが、存在は確かに見えてくる。
木村萌