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Ohshima Fine Artにて山本一博の個展「people you may know in unreal」が2022年3月26日(土) から4月16日(土)まで開催されます。
創作の考察
山本一博の作品には、可愛いく異端で面妖な人物(のようなもの)が駆け巡っている。
作家は墨と筆の線を使って想像上の人物や架空の生き物などを描いていく。
運筆の線は、書の中の線のように画面の中で存在感を持つこともあれば、人物の顔の輪郭などを示すこともあり、絵の中でいろいろな役割に行き来する柔軟な線を目指しているという。
また、そのような線を使って、あちらを立たせてこちらを寝かせてと、うろうろまた縦横無尽に、もしくはコントロールしつつ、画面の中に何かを醸し出していく。
同様にまず筆を走らせることで徐々にカタチが表出して意味が組成されてくる場合もあるだろう。その行為は、理性と無意識のバランスを線の動きのように自由に駆け巡る所作を為し、コンセプト至上主義の現代美術作品の制作手法とは異なるかもしれない。その結果、作品に登場するのは、その様なうろうろ逡巡の産物として形作られた、鑑賞者の側に寄り添う想像上の人物や架空の生き物だ。
作家の制作の進め方として、線の置き方に、国芳や北斎や石燕の浮世絵、作者の身近にある醍醐寺の善女龍王像などの古典宗教画、はたまた戦後の漫画などの一見シンプルに見えるが、情感が織り込まれている面様などを参考にすることもあると。
例えば、手塚治虫氏の困り顔の表現に使われる線のカーブなどは、読者の感情移入を操作する優れた線のように考えられると作者はそうした線からヒントを得ることもある。
鑑賞者に伝えたい言葉に、「作品の中にみなさん自身、またはお知り合い方を見つけていただければ、創作者としては本望です。さらに、妖しくも可愛い架空の生き物たちと頭の中で戯れていただくのもまた一興と思います。」というメッセージに山本の想い諸々が込められているのであろう。