イベント紹介Event Information
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日用品や道具など、身近にあるものに新しい命を吹き込むように作り出される前田の作品は、素朴な驚きと遊びごころに溢れています。しかし、ごく普通のもの、例えばスタンプやリボンなどに本来の用途から離れた姿やイメージを与えるには、素材に対する深い観察と理解、そして既成概念に捉われない自由な想像力が必要です。
これは「工夫と思考の連続」に他ならず、前田の作品にはまるでこのプロセスが生み出す音が聞こえてくるかのような楽しさが宿っています。
前田の作品のもう一つの重要な要素として、北海道の自然環境があります。札幌で生まれ育ち、現在も札幌で活動する前田は幼少期から豊かな自然に触れ、その魅力を理解していました。動植物の有機的な形状や、季節や年月により変化・循環する過程、その全てに自然界の明確な根拠があるということ。札幌から少し足を伸ばせば広がる壮大な自然に包まれて生きているという感覚が、前田の作品に独特の柔らかさをもたらしているのかもしれません。
前田は手法や素材により数多くのシリーズ作品を制作していますが、本展では無機質なピクセル画にカーブを与えることで生命感を宿らせる「Pucker & Bloat」、カリグラフィーペンの独特な線を生かした「Charagraphy」、時代の流れとともに不要論も持ち上がる印鑑を用いた「STANP BY ME」の各シリーズをご紹介します。
独創的な見立てにより、偶発的な発見を必然的な形に昇華させる前田麦の世界観をこの機会にぜひお楽しみください。
Artist comment:
今回の展示では、この10年で培ってきた様々な試行・実験作品の中のいくつかの手法を選んで発表しています。
一見、バラバラに見えるそれぞれのシリーズも、数十年、数十個と試し、俯瞰で見ると大きな川の流れのように全て繋がっています。
この川の流れはこれからも続きますが、一旦今の流れを切り取って見ていただければ幸いです。