イベント紹介Event Information
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この度、TEZUKAYAMA GALLERYでは3年ぶりとなる上原浩子の個展「境界より」を開催いたします。
1985年、群馬県に生まれた上原は、2012年に京都市立芸術大学大学院美術研究科を修了。その後も現在に至るまで京都を拠点に制作活動を続けています。
大学院修了後はそれまで制作していた絵画作品と並行しながら、立体作品の発表も精力的に行うようになり、自身の表現の幅を広げてきました。絵画制作で培った描写力と以前から興味があったと話す日本古来より伝わる自然の中に精霊や神が宿ると言われるアニミズムの思想に感化され、一貫して植物と人間の融合をテーマに制作しています。モチーフとされる生き物の表情は穏やかで、繊細で柔和に表現された肌からは、神々しく優しくも強い生命力を感じることができます。
2016年には、台北に拠点を持つAKI Galleryにて初の海外での個展が開催され、3フロア全体を上原の世界観に変換させた展示は、現地においても大きな話題と注目を集めました。2018年のTEZUKAYAMA GALLERYでの個展では、ʼDeep Forestʼをテーマとした作品を展示し、その世界観を色濃く残していきました。
今展は「トドワラ」という北海道、野付半島にある少し異質な場所から着想を得た新作の絵画作品、立体作品で構成します。鑑賞者は、上原の神秘的な世界観を目の当たりにすることができるでしょう。
是非、この機会にご高覧賜りますよう、お願い申し上げます。
【アーティストステートメント 】
北海道の東の端に野付半島という少し変わった場所がある。オホーツク海に向かって湾曲しながら突出する約26kmの細長い砂嘴で、半島を通る一本道の両側には海が迫り遠くに国後島を臨む。その地に行ったのは4年前のことで、目的は半島の先端部にあるトドワラという場所が見たかったからだ。湿原の上に立ち枯れたトドマツの残骸が残り、特異な風景を作っているトドワラは「この世の果て」とも形容される。現在も風化が続き、もうすでに数本の枯れたトドマツが立ち並ぶだけのトドワラは、昔写真で見た光景とは変わっていたが、それでも強く心に残った。広大な空と海と、ほんの少しの陸地の境界にいた夏の午後を私はきっと忘れないだろう。
昨年はコロナ禍で好きな旅行もほとんどできなかったせいか、昔行った旅先のことを考える時間も多く、トドワラやその周辺の光景のことなど、なんとなくその想いを形にできればと思い続けていた。
久しぶりに絵を描こうと思った。この文章を書いている時点で未完成だが。今回展示する作品のすべてがそれに纏わるものではないが、あの日感じた光や風や見た光景を自分なりに形にできればと思っている。
上原浩子