イベント紹介Event Information
※新型コロナウィルス感染拡大による社会情勢に伴い、美術館およびギャラリー施設において休廊、休館、もしくは会期の変更をしている場合がございます。詳しくは、各施設サイトをご確認いただきますようお願い申し上げます。
※6月より事前予約制となりました。 尚、本展の開催にあたりましては新型ウイルス感染拡大防止対策として、ご入場時にメールアドレスを頂戴しております。施設内で万が一があった際は迅速にご連絡できるよう、皆様のご協力をお願い申し上げます。また、入場時にはマスクの着用をお願い申し上げております。混雑時には通気性を確保するため入場制限を設ける場合もございますので、ご了承いただけますようお願い申し上げます。
ワコウ・ワークス・オブ・アートではこの度2021年4月22日(木)から7月10日(土)[緊急事態を受けて当初の6月12日(土)から延長しました]まで、スイス人画家ミリアム・カーンMiriam Cahn による個展『lachenmüssen笑わなければ』を開催いたします。当画廊では2年ぶり5度目の個展です。力強い色彩と伸びやかな筆使いが特徴の油彩画15点に加え、80年代に描いた3点の水彩画も展示いたします。うち油彩5点は未発表の新作です。2019年のあいちトリエンナーレに並んだ作品も改めて展示いたします。※祝・日–火は休廊です。連休中の特別開催はございません。
ミリアム・カーンは1970年代に反核運動やフェミニズムといった社会的動向に影響を受けながら、アーティストとしてキャリアをスタートしました。活動の初期には、大型の紙を床に敷きその上に木炭で描くという身体性を兼ね揃えた大型のドローイングなどを多く制作していました。当時は、グラフィティも度々描いており、1979年に描いた「My woman-ness is my publiv part(女性であることは、私のパブリックな部分だ)」というグラフィティで広く知られるようになります。以降、ドクメンタやベニス・ビエンナーレを始めとする国際展にも出品するなど、精力的に活動してきました。
90年代半ばから、美術の伝統的手法と感じてこれまで描いてこなかった油彩画での制作をするようになります。カーンの描く油彩画は、全身を使って描いていたドローイングの勢いを引き継ぎながら、重層的で鮮やかな色彩で描かれています。86年のチェルノブイリ原発事故の前年から描かれるようなった水彩のシリーズに始まり、2000年代の難民問題を始めとした様々な社会問題を主題にした油彩画など、ポリティカルな問題と自らの芸術観を織り交ぜた作品を書き続けています。また、人物、植物、建築、動物、風景というモチーフを繰り返し描いており、時折その輪郭は幻想的にぼかされ抽象的な印象を鑑賞者に抱かせます。
カーンの作品のなかでは私たちを取り巻く身近なものと社会的に問題とされていることとに、同じ目線が注がれています。社会全体が抱える痛みや問題と、私たちと共に生きる動植物そして人間とが、等しい価値の中で描かれるのが特徴です。厳しい視線と暖かな眼差しを同時に提示しながら人間の本質を問います。
2019年には個展「ICH ALS MENSCH (人としての私)」がヨーロッパの3箇所の美術館を巡回したのを筆頭に、複数の大型個展が開催されて話題になりました。そして翌2020年には、前年の展覧会を踏まえて私的な内容で構成された個展
「ME AS HAPPENING」がKunsthal Charlottenborg(デンマーク)で開かれるなど今後の活動も注目されるアーティストです。
また、4月22日から9月26日まで森美術館で開催される70歳以上の女性作家を特集した「アナザーエナジー展」にも参加いたします。あわせてご清覧いただければ幸いです。