イベント紹介Event Information
ミヅマアートギャラリーでは、11月18日(水)より、グループ展「Uninterrupted Wanderー不断の彷徨 」を開催いたします。
2020年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるパンデミックが世界を変えた一年となりました。多くの命が奪われ、生活様式を変えざるをえなくなり、人や国同士の関わりにも大きな変化を強いられ、今も不安が私たちの心に深く根ざしています。一方で、予防意識の高まりや「日常」の大切さなど、この出来事によって私たちは多くのことを感じ、学んだとも言えます。
ミヅマアートギャラリーではこの2020年最後の展覧会として、青山悟、池田学、金子富之、近藤聡乃、森淳一、山口藍のグループ展を開催することにいたしました。コロナ禍においても作家たちの絶え間ない創作とその思いを感じられる展覧会となりましたら幸いです。
今年、特に世界の変化に鋭敏な態度を示した作家の一人だった青山悟。4月の緊急事態宣言直後にスタートした自身のオンラインストア「Everyday Art Market」は、「非日常」な毎日であっても「日常」的に制作を続けることをモットーに、日々即興的に刺繍するシリーズを発表。同シリーズは「DOMANI・明日展 plus online 2020 」や練馬区立美術館での「再構築」展に発展し、ユーモア溢れる視点で世界を捉えた青山の作品は話題となりました。今回はそのEveryday Art Marketの新作を展示いたします。
細かなペンを使い、線の集積によってミクロからマクロな画面へと展開していく池田学。
アメリカを拠点とし、近年は企業のスタジオを開放してもらい大作に挑んでいた彼の日常もまた、大きく変化せざるをえなかったと言えます。外出が禁止されたロックダウンの中、感染への不安やそれに連鎖した銃社会への恐怖などの日々の思いが、家での創作活動に繋がりました。本展では池田の現在が反映された小作品を展示いたします。
幼少より土俗的な精神世界へ興味を持ち、主に妖怪や精霊、神々など、目に見えない精神世界を描き続けている金子富之。本展で展示をする《武蔵野龍神》は、巨大な積乱雲から大粒の雹が降りだす様子を見た金子が、圧倒的な自然の力を感じ、天空にも龍の存在を意識した経験を元に、埼玉にかつてあった武蔵野という広大な野原に宿る龍を描いた作品です。本作とともに手のひらサイズの虎を描いた豆虎シリーズなども併せて展示いたします。
ニューヨーク在住の近藤聡乃は、自身の原初的経験や記憶をアニメーションやマンガ、絵画やエッセイなどの手法を用いてたおやかに表現してきました。最近では、初の長編恋愛マンガ「A子さんの恋人」を、6年半の歳月をかけて完結させました。本展では、マンガ連載後にアニメーションを制作しようと、2014年から作業の合間に描いてきた「アニメーションのためのドローイング」シリーズを展示いたします。構想が具体化する前段階のイメージスケッチのようなもので、貝、石、海、母と子など気に掛かるモチーフが思いつくままに描かれています。
森淳一は、故郷の長崎が持つ戦争の傷跡、それを背負ってきた歴史とその歪みを静かに見つめ作品に投影してきました。本人が企画も務める、東京藝術大学美術館 陳列館にて開催されるグループ展「Public Device ??彫刻の象徴性と恒久性」(12月11日-25日)では、長崎の端島(通称、軍艦島)をモチーフとした作品の発表を予定しています。本展では、長崎の被曝マリアをモチーフとした今年の新作を展示いたします。
「とうげのお茶や」で暮らす遊女たちの姿を通し、ただひたすらに美しいと感じられるものが作りたいと制作を続ける山口藍。2018年より描いている「七十二候」シリーズは、季節の移ろいや自然の変化、機微を汲み取り、そこに少女たちの視点を重ね合わせます。情勢を敏感に受け取り、繊細に作品へと昇華する山口は、世界が変わりゆく中でも制作を続け、私たちに季節の巡りや時間の大切さを気づかせてくれます。本展では新作を中心に板絵、和紙、陶器など多様な素材で作られた作品を展示いたします。
「創造を途絶えさせないことによってのみ、アートは時代を映す鏡たり得る」※という青山悟の言葉のように、私たちギャラリーも活動を途絶えさせることなく、これからも素晴らしい作家たちの作品を世界に向けて紹介していきます。
ぜひご高覧たまわれましたら幸いです。
また、来年第一弾の展覧会は、若手作家を中心としたグループ展を引き続き開催いたします。