イベント紹介Event Information
KANA KAWANISHI GALLERYは、2021年3月6日(土曜日)より横山隆平と長谷川寛示による二人展『Some kinda freedom』を開催いたします。
横山隆平は、東京を主体にモノクロフィルムによる都市写真を発表してきた写真家。2020年に発表した新シリーズ〈WALL〉では、自身のライフワークとして撮り溜めてきた数千枚にも及ぶストリートスナップからプリントしては洗いをかけ、さらにそこにプリントするという行為を繰り返し、街の壁の経年変化を表現してきました。それらの写真はさらにレイヤーに分けられ、紫外線で瞬時にインクが硬化するUVプリンターで出力されることで、幾重にもインクが立体的に盛り上がり、見る角度によって異なる表情が顕現する唯一無二のプリントとして立ち現れます。あるいは 〈WALL crack〉 シリーズでは、通常は印刷できない素材表面にも独特の質感や立体感を印刷できる技術を活用し、街で収集されたコンクリート片などの瓦礫そのものにストリートスナップを印刷し、発表してきました。
長谷川寛示は、「概念」を「形象」へと落とし込む制作過程でそれぞれに通じるものとして、学んできたアート表現や、親しんできたパンクロックカルチャーのみならず、仏教への興味を東京藝術大学美術学部彫刻科の在学中より募らせ、曹洞宗大本山永平寺での修行を経て、現在は僧侶とアーティストを両立させながら制作活動を行なっています。リアリズムの造形を行いながらも、モチーフの表象を介入的に組み替える長谷川は、作品制作を通し、自らの属する文化や社会に内在する観念や価値に疑問を投げかけてきました。
2020年秋に二人は作品を通じて出会い、偶発的な縁のつながりで本展が開催される運びとなり、今回の二人展では、個々の作品に加え、初のコラボレーション作品 〈WALL crack & weed〉 も発表いたします。
〈WALL crack & weed〉 で長谷川は、渋谷に自生する雑草をリサーチし、変わりゆく街並みにまどわされずに淡々と芽吹き続けるいのちに着眼します。仏具の伝統的技法である木彫に金箔と和蝋燭による煤で経年を凝縮し形象化された植物モチーフは、グラフィティのスナップショットが直に印刷されて花器に見立てられたコンクリート瓦礫片に、華道的にあしらわれることで一期一会を恒久化します。横山がライフワークとして大量に撮り溜めた渋谷のグラフィティのストリートスナップは、人々の生活の営み場の記録であると共に、スクラップ・アンド・ビルドで変わりゆく街の無常を体現するものでもあり、二人の表現が響きあった本作は、変わるもの・変わらないもの、残るもの・残らないもの等の根源的な相反をも肯定的に内包します。
「ストリート」と「仏教」は、一見すると正反対の両極に位置する概念に思われるかも知れませんが、日常の生活の細部に至るまであらゆる物事をありのままに受け止め、正しくみつめることで、よりよい生き方を全うする禅的な思想は、まさにストリートと相容れる価値観と言えるでしょう。
偶然的な邂逅からストリートと仏教が見事な融合をみせる本展を、是非お見逃しなくご高覧ください。