イベント紹介Event Information
この度LOKO GALLERYでは、2020年12月18日から年明けの1月22日まで「Repetitions - 反復」を開催いたします。本展はストックホルム在住で、LOKO GALLERYにて2017年に個展を開催したアーティスト、ハンス・アンダーソンと、東京とベルリンを拠点とするディーラー/キュレーターの宮下和秀による共同キュレーション展となります。スウェーデンと日本の7名の作家たちによる、反復/繰り返しの行為をすることによりつくられた作品、あるいは反復そのものが作品となる作品を展開いたします。
ハンス・アンダーソン(1979〜 )とイルヴァ・カールグレン(1984〜 )は、日本での滞在制作経験があり、日本の生活に根差した思想は彼らのインスピレーションの源となっています。クリスティーネ ・エドルンド(1963〜 )は、絵画、彫刻、ビデオ、サウンド、楽譜など様々な媒体で表現しますが、今回は植物と人間のコミュニケーションについての映像作品を日本初発表。ロシア出身で現在スウェーデンに制作の拠点を置くアリナ・チャイデロフ(1984〜 )は、個人的な記憶の断片をを再構成するようにオブジェクトを組み合わせた彫刻作品で参加します。
日本からは、コンセプチュアルアートの先駆者として国外で広く知られ、近年国内でも再評価がなされている松澤宥(1922〜 2006)、その独自の抽象表現で孤高の制作活動を続ける村上友晴(1938〜 )、西洋絵画の歴史にも影響を与えた浮世絵師、歌川広重(1797〜1858)という構成で美術史における既存の様式や枠組みを越えた作品群となります。
作家たちが瞬間に起こることを留め、反復/繰り返しを内包した作品群をLOKO GALLERYの立体的な空間に配置することで、会場を満たす様々な周期を感じていただける場になることを期待しております。
ジョン ケージは《Lecture on Nothing》(1950)において反復を利用し、リスナーに自らが作品の一部であることを認識させた。彼曰く、リスナーは一般的に音楽作品を自分のために提示されているものとみなし、創造の担い手である自らの役割を忘れがちであるとのことだ。反復は通常、独自性や創造性に相反すると思われがちだが、ある側面ではそれは正しい。
解釈学的な流儀から解釈をすると、すべての既知のものとの出会いは、新しい理解の仕方や慣れ親しんだものを別の方法で見る機会をもたらす。ニーチェにとって反復は「永劫回帰」と結びつき、ドゥルーズとガタリは「何度も始めることの力」と呼んだ。
「私の生は至高へ至ろうとする幾つかの輪の中にある」
ーライナー・マリア・リルケ
本展では、絵画、彫刻、映像など、さまざまなメディアにまたがって展示される。このような様々な表現の中でアーティストたちは、反復を制作に取り入れた作品を提示している。それは言語の脱構築か、再び始める方法なのか。
ハンス・アンダーソン/アーティスト
彼らは繰り返す。存在と不存在、行動と非行動、陰と陽、0と1が反復する。
同一の時間軸に沿って繰り返される営み。
しかしもし願ったとしてもある出来事が以前の出来事と全く同じになることはない。
それでも彼らは繰り返す。
あるいは我々が”繰り返し"と呼ぶものは、本当は繰り返していないのかもしれない。
そもそも、生まれる前から心臓は鼓動を刻み続けている。食事とそれに伴う排泄は数えきれず
まばたきは既に数億回を超えている。
しばらく生きるとして、これからどれだけ繰り返すことになるのだろう。
そして我々が繰り返しと呼ぶものは、いつか終わりを迎える。
繰り返しが一つのかたまりとなって、それがさらに繰り返される。
宮下和秀/MUG主宰、アートディーラー、キュレーター