英国・ウェールズ出身で世界的に活躍するアーティストのケリス・ウィン・エヴァンスは、2019年に弘前を訪れリサーチを行いました。そこで出会ったりんごに着想し、その断面のフォルムから万有引力の公式、惑星の軌道といった象徴的なイメージやモチーフをグラフィカルに組み合わせた巨大な灯(ともしび)、あるいは光のトーテムのような作品を生み出しました。
まるで、美術館の吹き抜け空間を照らすかのようなネオン管を使った巨大な彫刻作品は、「植物としてのりんごの生」、「りんごからシードルへの加工・生産の残像」、「原罪の比喩(欲望・原動力)」、「ユリイカ(わかった!)の瞬間」、「ニュートンの万有引力から導かれる宇宙の自然法則、太陽の周囲をめぐる軌道」など、りんごをめぐる思考が発想の元となっています。
2021年度の春夏、秋冬プログラムは、より自由な展示のリズムや空間の使い方を探り、作品の多様な解釈を促すことを念頭に、本作品を核として異なるテーマ・展示内容で構成されます。
第一部となる「りんご宇宙―Apple Cycle/Cosmic Seed」では、りんごをめぐる豊かな思考と想像に着目した多様な作品を展示します。りんごは、西洋美術史において、古来より豊穣や生命のはかなさなどの象徴として多く描かれてきました。本展は、必ずしもそうした表象のみを取り上げるものではなく、現代のアーティストらによる、りんごを素材とした新たな創作アプローチや、生と死、循環、種子、変容などに関連して、りんごという日常の身近な存在から宇宙規模に展開される多様なイマジネーションのかたちを紹介します。
さらには、美術史上のりんごの表象や、「弘前エクスチェンジ」におけるりんごに関する様々な地元の研究や取り組みなども併せて、改めてりんごの意味の豊かさや可能性に触れ、新たな発見に繋がる機会になることを願います。
ゲスト・キュレーター 三木あき子
<展覧会のみどころ>
1.弘前のりんごから着想を得たケリス・ウィン・エヴァンスの新作を初公開
ケリス・ウィン・エヴァンスの新作コミッションワーク(委託制作)を新たな収蔵作品として、春夏プログラム・秋冬プログラムの2つのシーズンにわたり展示します。りんごをめぐる思考のプロセスをもとに制作された高さ約7メートルの巨大な彫刻作品を発表します。
2.8名の現代アーティストによる多様な作品群で構成
ケリス・ウィン・エヴァンスに加え、雨宮庸介、タカノ綾、和田礼治郎も、この場所に合わせた新作を発表します。潘は「弘前エクスチェンジ」でのリサーチやワークショップを通して制作した新作を公開。各アーティストの代表作から近作を含め、絵画から映像、インスタレーション、パフォーマンスまで多様な作品群をご覧いただきます。
3.ジャン=ミシェル・オトニエルの新作をついに公開、長期展示作品に
新型コロナウイルス感染症の影響で展示が遅延していたジャン=ミシェル・オトニエルの新作コミッションワークが遂に公開されます。直径2メートルにおよぶ大型のガラスの彫刻作品は、今後数年間にわたり受付カウンター横の階段前に長期展示されます。
4.様々な角度から「りんご」の豊かさとさらなる可能性に触れる
弘前市は全国の市町村の中でりんごの生産量が最も多く、国内有数のりんごの生産地です。「弘前エクスチェンジ#03」では、りんごの研究に取り組む地元の機関・施設の活動を紹介し、研究者やりんごの生産者を招いたトークイベントやさまざまなプログラムを展開していきます。
<アーティスト>
雨宮庸介、ケリス・ウィン・エヴァンス、河口龍夫、タカノ綾、和田礼治郎、
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ジャン=ミシェル・オトニエル、笹本晃、潘逸舟(ハン・イシュ)
笹本晃「スピリッツの3乗」パフォーマンス
日時:2021年7月3日 14:00 – (13:45より受付開始)
会場:弘前れんが倉庫美術館 展示室3ほか
定員:20名
要事前予約・要観覧券。お申し込みはこちらから
https://20210703perfomance.peatix.com/
新型コロナウイルス感染症の影響により、内容変更もしくは中止となる場合があります。