幼い頃から絵を描くことが大好きだったシスは、1949年にソ連支配下の共産主義国家であるチェコスロヴァキアのブルノで生まれました。子どもが絵を描くことさえも管理される難しい環境の中で育ちましたが、彼は芸術的創作への意欲を失うことなく成長しました。プラハ美術工芸大学とロンドンのロイヤル・カレッジ・オブ・アートで学び、短編アニメーションの制作でその才能を広く認められるようになります。西ベルリン映画祭で金熊賞を、トロント映画祭でグランプリを、そしてロサンゼルスの映画祭では金鷲賞を受賞するに至っています。その才能から、シスは1982年に政府よりロサンゼルス・オリンピック(1984年)の映像制作のためアメリカに派遣されますが、祖国を含めた東側諸国がオリンピックのボイコットを表明したことを受け、この時、アメリカへの亡命を決意します。ニューヨークに拠点を定め、新聞、雑誌、絵本などのジャンルを中心に活動を続け、この新天地において絵本作家としての人生をスタートさせたのです。先に紹介した数々の意欲的な創作活動の中で、ニューヨーク・タイムズ紙が選ぶ年間ベストテンや、パブリッシャーズ・ウィークリーのベストセラーリストの常連となるなど、シスはアメリカでの絵本作家としての地位を築き上げました。
その証拠に、近年、アメリカや祖国チェコで開催された展覧会はいずれも盛況に終わっています。シスの友人であり、先日91歳で亡くなったアメリカを代表する絵本作家エリック・カールの美術館において、2019年に”The Picture Book Odysseys of Peter Sís”というシスにとってはじめての展覧会が開催されました。続けてチェコでも、2019年から翌年にかけて ”Peter Sís: O létání a jiných snech On Flying & Other Dreams”が開催され、まさに故郷への凱旋展となりました。
が開催され、まさに故郷への凱旋展となりました。