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DIESEL ART GALLERY(ディーゼル・アート・ギャラリー)にて、LAを拠点に活動するErin D. Garcia(エリン・ディー・ガルシア)による個展「Super Silhouette(スーパー・シルエット)」が2022年8月13日(土)から11月10日(木)まで開催されます。
LA拠点アーティスト・Erin D. Garcia(エリン・ディー・ガルシア)が、5年ぶりに東京での個展をDIESEL ART GALLERYにて発表。
ガルシアは、ミュージシャン、プロデューサー、作曲家として数年間ツアーに参加した後、2012年に開催した個展からアーティストとしてのキャリアをスタートさせました。その後、ロサンゼルス、サンフランシスコ、ロンドン、ベルリン、東京など世界各国で作品を精力的に発表してきました。
ガルシアが描く伸びやかなドローイングは、色とラインが何層にも重なる反復によりシェイプを表していきます。一見するとシンプルに見えるシェイプも、彼独自に調合した数々のカラーパレットと空間に対して大胆にストロークするプロセスにより常に予定調和を超えたものとして浮かび上がります。
本展のタイトルにある「Super Silhouette」は、彼が描くその超越するシルエットを示している一方で、かつて80年代後半〜90年に流行ったモータースポーツ用の改造車からインスピレーションを受けたものになります。「スーパー・シルエット」と呼ばれた車は、市販の量産乗用車のシルエットを残したまま、中身だけ競技に耐えうるよう無制限に改造するという美学を持っていました。これまでもガルシアは、個展のタイトルに「Grand Prix」や「Skyline」などカーレースに因んだ名前をつけてきましたが、そのスピード感のある力強い言葉のイメージから私たちがいま目の前で見るガルシアの作品を想像するまでには距離を感じるかもしれません。その想像のギャップは、例え可視化されたシルエットや手法が存在していたとしても、中身はとらわれることなく自由自在につくれるといったガルシアの制作スタイルそのものを表しています。今回発表される新作は、花、植物、果実など具象的なモチーフが度々登場し、静物画の構成を感じさせます。しかしそこに描かれる「静」は、まるで見た目と異なり速さを持った「スーパー・シルエット」のように、彼が扱う繊細な筆遣いにより、躍動した流れの一部を切り取った「静」にも感じられるのです。
本展覧会では、40点以上の新作の展示・販売をはじめ、アート・キャンディ・ショップ「パパブブレ」とのコラボキャンディが展覧会限定で販売されます。また「Super Silhouette」展を記念して、DIESELとコラボレーションによる商品や、展覧会限定の待ち受け画像のプレゼント企画も登場します。
「Super Silhouette」に寄せて
エリン・ディー・ガルシアの「Super Silhouette」は、一見シンプルに見える作品群で、静謐な印象を受けます。この展覧会は「静物」という言葉のあらゆる意味に細心の注意を払いながら、「静物」を包括的に探求しているように感じられるからです。
しかし、その一瞬を見逃すと、なぜ最小限の筆致でこれほど細部まで表現できるのか、なぜ花がただ佇んでいるのではなく、花瓶から飛び出してくるように見えるのか、疑問を抱かずにはいられなくなります。これらの「静物画」は一瞬を捉えているかもしれませんが、私たちの動きや時間に対する感覚を変えてしまうのです。
この展覧会の名前はそのヒントになるかもしれません。「Super Silhouette」はパワフルなレーシングカーのクラスで、ガルシアのこれまでの作品でもモータースポーツにちなんだものがありました。「Super Silhouette」では、その名の通り植物が動きとスピード感を持ちながら、逆説的に静止している様子を感じることができます。
― ライター / Jimmy Jolliff (https://jimmyjolliff.com)