イベント紹介Event Information
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ギャラリーノマルにて、田中朝子「light in a pool」が2022年5月28日(土)から6月25日(土)まで開催されます。
水中に沈めたオブジェを撮影した代表作「pool」シリーズ。
今回“光”を新たなテーマに据えて、深化した新作展を開催
日常的な視点から捉えたごく些細なズレや錯覚を、写真・版画・映像など多様なメディアを介して作品へと昇華する現代美術作家・田中朝子。その視点はユーモラス、作品は透明感、軽やかさがありながら、根底では人の認識の多様性や画一的でない世界の有様を鑑賞者に提示します。
3年振りの個展となる今展では、2007年の個展に合わせて制作を開始、のちに田中の代表作の1つとして数えられる作品「pool」シリーズに再度脚光をあてた新作を発表いたします。
「pool」シリーズは主に日常の中で目にする様々なオブジェを水中に沈めて撮影した写真作品です。光の屈折によって実在感が曖昧となったそれらオブジェは、重力や実用といった本来の意味から解放され、純粋な視覚体験としてのイメージが提示されます。また、“見る”環境や行為自体も作品化する田中は、2007年の「pool」展では広いギャラリーの床を一面、白いタイル張りとして、来廊者をひととき水際の空間への誘いました。
「light in a pool」と題された今展では、“水”をテーマに考察を深めた結果導き出された“光”の性質に着目。水を使って光を捉え、その光と視覚によって認識される様々な色やカタチを、田中独自の手法で作品へと昇華させます。
多様な手法によって繊細に、また大胆な発想で、時にユーモアを織り込みながら世界の普遍性や多様性を私たちに提示する作家・田中朝子の新作展。
是非とも、今展をご高覧くださいますよう、よろしくお願いいたします。
[Artsit Statement]
light in a pool
「light in a pool」とは、2007年にギャラリーノマルで開催した「pool」展の続編の様なものです。
「pool」展では紅茶(“tea in a pool”)やホース(“hose in a pool”)などの日用品を水に沈め、写真作品にして展示しました。
ある日のまだ明るい時間、お風呂に入っていてフト、お湯に浸かった自分の手が普段より白けて見えたのがきっかけでした。感覚的には「白けて」だったのですが、回想すれば、水の中では水の外より、発色が大人しく儚げで物理的だけでない浮遊感が感じられたのです。どうやら水のフィルターによって、実在感を失い抜け殻の様になるのです。そんな気づきから、嬉々としてあれこれトプンと水に沈めては写真にしました。
当然ながら、展覧会が終わったからと言って興味が無くなる訳ではなく、その後も相変わらずお風呂の中では手を眺め、ラッキョウの瓶詰めに見入り、時に水が残ったグラスの底から空を見上げたりする日々が日常として淡々と続きました。
そしてそんなまたある日の陽の昇る頃、「虹を沈めてみたい」と唱えながら目覚めてしまい、「pool」モードの日々が再び始まりました。
寝ぼけた思いをどこまで形にできるかは別として、再び始めて気づいたのには、水の現象として思って追究していたものが、それは光の現象でもあること、私が無性に惹かれる透明感や浮遊感、揺らぎなどは光あってのものなんだと、今更ながら認識し、光に敬意を込めて今回は「light in a pool」と掲げることにしました。
光に満ちたpoolの空間を、ご一緒に楽しんでいただけたら幸いです。
田中朝子