イベント紹介Event Information
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YUGEN Galleryにて、牧かほり ドローイング展「Where is Alice?」が5月20日(金)から5月25日(水)まで開催されます。
牧かほりは"一枚の絵から立ち上がるプロダクト、スペース、&ワーズ"を制作の核とし、広告をはじめファッションやスポーツブランドのテキスタイル、企業や高級ホテルなどの空間デザインまでを手がけるグラフィックアーティストです。
2年前から断続的に発令された緊急事態宣言。
画材屋も印刷屋も営業活動ができず自身のアトリエにあるものだけで制作しなければならない状況で、手元にあった大量のクラフト紙に鉛筆でドローイングをし続けてきました。
外に一歩も出られない事態に多くの人と同じように不安を抱きながらも、ただただ手を動かす中で生まれてくる曲線の重なり。その線の重なりから「これまで描いてこなかった人の目や瞳を意識するようになり、自然と生きものや、それらしきものを多く描くようになった」と話します。
そこから、かつてテーマとして取り組んだものの未完に終わった『不思議の国のアリス』の世界を紐解いてみたいと思ったのが本展のきっかけとなります。
本展では、2年間描き溜めたものと今回のために描き下ろした作品に加え、ギャラリーの壁一面を使って会場設営の際に直接ドローイングをする壁画作品も登場。これら約30点の作品には牧の特徴でもある曲線から抜け出すように現れた鳥やうさぎ、そして誰も知らない、でもどこかには存在するらしきものが描かれています。
不条理な世界に思いがけず滑り落ちてしまうことを、まさに今私たちは感じています。行く先々が変な場所で、出会う誰もが理解しがたい言動をとる動物ばかりのアリスの世界は仮想の世界といえるのか?
今注目を集めるメタバースという仮想空間。
そこからすると効率は悪く、進みが遅い現実世界。
その両方を覗く私たちはどこにいて、どこに向かうのか。
「今もって混沌の世界の中にいる私たち。重なり続ける線の中に、意志を持つこと、委ねること、そして面白みや豊かさや可能性を見つけてもらいたい」と牧は話します。彼女のドローイングの線を追いかけるようにして辿り着く、新しい世界への没入感をお楽しみください。
- 本田賢一朗 -