イベント紹介Event Information
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YOD Galleryにて、黒田恵枝個展「Existence」が2022年4月9日(土)から4月30日(土)まで開催されます。
黒田は使用されなくなった衣類を素材に、動物や人体のパーツなどを創作し、それらを繋ぎ合わせる事で空想の生き物、『もけもけもの』を創りだしている。廃棄されるはずだった衣類は、黒田の手によって新たな命が与えられ、可愛さと同時に強い生命力も感じさせられる。『生きるとは何か』、世界的なパンデミックを経験する中で、黒田は作品に対する死生観の切実さがさらに増したという。
黒田の作品を通じ、私たちは、人と人との繋がりや個としての存在を改めて考え直す機会になるだろう。
―作家ステイトメント
廃棄衣類を主な素材として、ぬいぐるみや人形、彫刻などの立体造形の概念を横断する創作形態に取り組んでいます。空想の生き物である「もけもけもの」、また、それらを用いたインスタレーションを発表しています。
「もけもけもの」とは、使われなくなった衣類を素材に、動物や人体のパーツなどをつくり、それらを繋ぎ合わせる事で生まれる空想の生き物です。「もののけ」と「 けもの」から「もけもけもの」という言葉が生まれました。
彼らは、個々の存在や成り立ち、他者や自身を取り巻く環境との関係性など、不確かな自身の存在に対し常に答えを求め続ける私たちの分身のようでもあります。その姿かたちには、動物の造形を借りていますが、それらの仕草や佇まいには、どこか人間らしい存在感を宿しています。それは、彼らを通して私たち自身を見つめることができるのではないかと考えているからです。
素材として用いる、使われなくなった衣類とは、身につける人と日常を共にし、あらゆる出来事や思い出を経験蓄積している存在であり、同時に死者のメタファーでもあると考えています。そのような衣類が「手縫い」という時間と労力を伴うプロセスを経て再び生まれ変わる過程は、ある種の儀式や、祈りのような行為でもあると考えています。
そのようにして生まれた作品は、生と死のどちらともを経験している存在、また、時に双方を自由自在に行き来し、それらがどのようなものであるかを私達に教えてくれる伝達者のようです。
継続して制作している「もけもけもの」、はたして彼らは何者なのか。制作を通して日々その問いに向き合うことで、私達自身とは何者なのかを探求しています。展覧会タイトル「Existence」存在とは、自身にとって根源的なテーマであると感じている言葉です。
本展では、存在しているということ、そして、そうたらしめるものとの繋がりをインスタレーションとして表現します。吊るしている作品に結んでいる紐は、使われなくなった衣類で組紐にして制作しています。組紐とは、細い糸を複数組み合わせてこそ生まれる強度があり、「縁、人、モノなど、あらゆるものを結ぶ」という願いが込められているとされています。
また、それらの作品が一定のペースで動き続ける様子は、私達自身の意思によって揺るがす事のできないこと、例えば時間、星の回転や心臓の鼓動など、私達が生きている限り私達が望む望まないに関わらず、ずっと続いているものの存在を示唆しています。