イベント紹介Event Information
※新型コロナウイルス感染拡大による社会情勢に伴い、美術館およびギャラリー施設において休廊、休館、もしくは会期の変更をしている場合がございます。詳しくは、各施設サイトをご確認いただきますようお願い申し上げます。
HRDファインアートにて、美術作家・伊賀美和子の写真作品による個展「Narrative & Non-Narrative」が4月14日から6月4日まで開催されます。
1999年に「キヤノン写真新世紀」で優秀賞を受賞するなど、写真を中心とした作品が国内外で高い評価を受け、近年は絵画やドローイングの制作にも取り組んでいる伊賀の、京都初個展となります。また、本展は「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」のサテライトイベント「KG+ 2022」の参加展覧会です。
伊賀美和子は1966年東京生まれ。既製品の玩具や人形、手作りの小道具などを用いて、ドラマの一場面のような物語性を感じさせるシーンや、無意味で奇妙な光景などをジオラマのように構成・演出し、写真に収めます。子供時代に見た映画やテレビのチープな合成映像から影響を受けたそれらの作品は、「ステージド・フォトグラフィー」の一種にも、また「レディメイド」の変種としても位置付けられますが、ときに辛辣に、またときにユーモラスに、不思議な現実感をまとって観る者に迫ります。
本展では、近年特に取り組んでいる、小説などの文学作品にインスピレーションを受け、その一場面を再現したシリーズに加え、ナンセンスなおもちゃ遊びに徹した旧作(《弄ばれた玩具》シリーズ)も併せて展示することにより、「演じる人形」と「演じない人形」の対比を通じてリアリティとフィクションの複雑な関係性を提示します。
私たちの人生は「Narrative(物語的)」なのか、「Non-Narrative(非物語的)」なのか? パンデミックや戦争など、にわかには信じがたい、非現実的とも言えるような出来事が続く現在の社会状況ともリンクしながら、生を取り巻く様々な思考が交錯する伊賀美和子の作品世界をぜひお楽しみください。
アーティストからのメッセージ
紙芝居のようにショートストーリーを持つ組写真から始めた写真作品から、最近は物語のクライマックスシーンを1枚の写真の中で表現する写真に変わってきました。
人は、混沌とした社会や私生活の中で「抑圧」と「解放」、「隠すこと」と「見えること」、「期待」と「絶望」など二極間を絶妙なバランスを取りながら漂っている一方で、ともすれば「極端」という流れに身を委ねることもあります。「極端」に「ドラマ」があり、そのドラマの中で、満足しない自分の役でさえ陶酔して演じる姿は悲しくも滑稽です。当たり前と捉えている日常の至るところに「極端への起爆剤」があり、昨今では人形と同じく何かに操られているような人間の脆さを感じながら制作をしています。 (伊賀美和子)