イベント紹介Event Information
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CADAN有楽町にて、nca | nichido contemporary art (日動コンテンポラリーアート)の企画による、ティントン・チャン、イーチュン・ロー、ジーホン・リュウ、坂本和也によるグループ展「緑の道 / Green Routes」が2021年12月21日(火)から2022年1月16日(日)まで開催されます。
■展覧会について
私たちは極めて日常的に植物と関わりを持っています。人類の歴史には常に植物の存在があり、また植物によって生み出される資源は紛争のきっかけを作り、また近年は深刻な異常気象や大気汚染など、人類が自然環境に与える影響は世界規模で大きな課題となっています。本展では、台湾を起点に植物やそのルーツへの関心から表現の題材にしている4名のアーティストに焦点を当て、様々な視点から植物(緑)と人間の道のりを考察し、過去を行き来しながら私たちが今抱える問題を提示します。
ティントン・チャン / Ting -Tong Chang (1982年台湾生まれ。現在台北とロンドンを拠点に活動)
ロンドン大学ゴールドスミス校 美術学修士号取得
チャン・ティントンは不条理で非理論的な社会や、消費主義の現代社会が与える社会的、生態的影響などあらゆる問題を提議し、ドローイングやパフォーマンス、立体、映像など様々な手法を用いて科学やテクノロジー、歴史など、自身を取り巻く世界を解体、融合させて作品に表します。本作はチャンが山間部に2週間滞在し、アミ族の猟師たちの協力のもと、現地で集めた材料を使って住居を建てるまでを映像で記録した最新の映像インスタレーションです。チャンは芸術的実践をサバイバルスキルに変換する実験を行い、オブジェクト指向の視点から人類の歴史の軌跡を再考しています。
イーチュン・ロー / Yi-Chun Lo (1985年台湾生まれ。現在台北を拠点に活動)
国立台湾芸術大学 美術学修士号取得
ロー・イーチュンは人と自然の関係、歴史をテーマに様々な地域コミュニティーに入り、フィールドリサーチを通して作品を制作しています。その表現はドローイングや大型インスタレーションなど多岐にわたり、モチーフにバナナの皮やたばこの葉など自然素材を用いるのも特徴です。本展の新作シリーズではサトウキビに焦点を当てています。サトウキビから生活必需品として製造されている砂糖やショ糖だけでなく、現在ではエタノール混合航空機ガソリンをも生成しています。製糖工場の目的は時代の需要、生活の変化や人々の利益によって大きく変化しています。ローは、サトウキビが原料のバガスを用いて軍需品やまた私たちがダイエットや健康維持を目的で使用する筋トレグッズを立体に表すことで、私利私欲を追求する人間社会に警鐘をならします。
坂本和也 (1985年鳥取県生まれ。現在愛知県を拠点に活動。)
名古屋芸術大学大学院美術研究科美術専攻同時代表現研究領域 修了
坂本和也は自身の趣味である水草の飼育(アクアリウム)を通して、生態系の構成要素のなかに現代の社会環境との類似性をみたことから、植物をモチーフにして物事の内面を表そうとしています。反復と増殖を繰り返しながら綿密に描かれる多種多様の植物は生命を維持するために変容を繰り返す進化の過程を描いているようです。また、坂本は自身が育てる水草のルーツが台湾であることから、2017-8年には文化庁海外派遣制度にて台北に滞在しています。国によって異なる植物と人との関わり方や、複雑な歴史背景の考察を通して、近年の表現はより多面的な要素を含んでいます。
ジーホン・リュウ / Chih-Hung Liu (1985年台湾生まれ。現在台北を拠点に活動 )
国立台北芸術大学 美術学修士号取得
リュウ・ジーホンは日常生活や周囲の環境、また旅先でみた風景や事象題材に作品に表しています。それは自然景観や事物の観察だけでなく、感情や感覚、時間を多面的に捉え、視覚化しようと試みます。その表現は絵画にとどまらず、プロジェクトやテーマによってインスタレーションや、映像、文字、立体など様々な素材を用います。コロナ禍のハーフロックダウン中に描かれた本作は、夜明け前に自転車を走らせた道のりでみたバナナの木をモチーフにしています。コロナ禍の見えない不安と息苦しさ、精神状態が見えると同時に現状から逃避し、自由を求めて走った解放感もみえてくるようです。