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MEMにて、三島喜美代 展覧会「パピエ・コレ」が9月21日(火) から 10月6日(水)まで開催されます。
三島喜美代は50年代画家として出発し、当初静物画など具象絵画を描いていたが、じき抽象絵画になり、新聞や雑誌の切り抜きをカンヴァスに貼り付けるパピエ・コレの技法を頻繁に使うようになる。パピエ・コレとは、フランス語で「はりつけられた紙」を意味し、ピカソやブラック等キュビスムの画家によって用いられた新聞紙、雑誌等をカンヴァスに貼り付ける技法を指す。
今日、この時代の三島の絵画を見ると、当時の社会状況を写す新聞や雑誌の、ある特定の記事が選ばれていることがわかる。例えば、当時武満徹等の現代音楽を愛好していた三島は《Work 67 – B》の表面に当時来日したピアニスト、クルトラップのコンサートのポスターを全面に使っている。また、「ヴィーナス」と題されたシリーズでは、英語の新聞が貼り付けられているが、そのうち《ヴィーナスの誕生 Ⅱ》の画面左上には、アメリカ合衆国の新聞が1965年に報じたDARの代表の交代についての記事が貼り付けられている。DAR(Daughters of the American Revolution)というのは、アメリカの独立戦争を戦った兵士たちの子孫の女性たちによって1890年に設立された団体である。この記事のスクラップは、女性性を賛美する有名なボッティチェッリのヴィーナスの誕生の図像とともに画面上に配置されている。このように、新聞記事や雑誌記事、広告チラシ等がスクラップされたものが徐々に画面はいりこみ、シルクスクリーンも併用しながら、技法や意味が複雑に交差した絵画空間が出現するようになる。三島にとって、「現代」を表現することが当時から重要であり、社会的、文化的出来事をパピエコレのかたちで絵画に取り入れることは必然であった。
三島にとっては、これらの絵画作品も通過点に過ぎず、この後、新聞や雑誌を陶の彫刻にするアイディアを得、その後は立体作品に専念するようになる。本展は、三島にとって陶の彫刻への架け橋になった、貴重な初期の絵画作品を展示する。