イベント紹介Event Information
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hpgrp GALLERY TOKYOにて、金沢を拠点に活動する若手漆造形家、鵜飼康平の新作展「Merge」が9月1日より開催されます。
金沢工芸大学在学中に漆と出会った鵜飼は、その素材が持つ歴史や、多くの工程を少しづつ積み重ねるプロセスに魅了されました。素地として使用する木から形を削り出し、樹液である漆を塗り重ねることで作品を仕上げます。木の自然な造形、その形を生かして自ら彫り込んだ痕跡、そこに塗られる漆と、「自然なことの連続の結果として」生まれた作品は、有機的な美しさとプリミティブな力強さを合わせ持っています。
国際的なアルチザンの発掘と支援を目指し、世界規模で開催されるロエベ ファンデーション クラフトプライズの2020年ファイナリストに選出されるなど、近年その注目度が高まっている鵜飼康平。hpgrp GALLERY TOKYOでは初の個展となるこの機会にぜひご高覧賜りますようお願い申し上げます。
アーティストコメント:制作について
漆は木の樹液で、木の傷口を塞いで守る役割を果たします。その性質を利用して、古くから天然の接着剤や塗料として、日本では主に箱やお椀などの器物に用いられてきました。私はこの漆という素材を造形表現に用い、制作を行ってきました。木や繊維、金属など様々な素材が支持体として用いられる中で、木を選択しています。木と漆のシンプルな関係性や、また、木を彫って形づくることで手の痕跡を残すことが出来る点が、木を用いている理由です。
それ自体では決まった形をもたない漆が、木と合わさることで形を得て、また、木は漆に包まれ、守られます。作品制作においても、これらの素材の関係性に着目しています。
漆を塗る度に表情を変え、木が包み込まれていく様子に心地よさを覚えます。また、漆を塗る・研ぐという単純な行為の繰り返しの中で、自分でも意図しない形態が現れます。偶然性を拾いながら、意識と無意識のあいだを行き来するような感覚があります。私はこのことに人間らしさを感じています。こういった感覚をもとにして近年制作している「融」シリーズを中心に展示致します。
ー 鵜飼 康平