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この度タカ・イシイギャラリーは、11月27日(金)から12月26日(土)まで、「内藤礼」展を開催いたします。タカ・イシイギャラリーでの初の個展となる本展は、新作の絵画作品と立体作品を中心に構成されます。本年開催された個展「うつしあう創造」(金沢21世紀美術館)では、はじめて「創造」と向き合った作家が、その先に見出す生の瞬間とヴィジョンを紹介します。
何かが顕われてくる瞬間を見ていたい。そういうことがほんとうに起きていると知りたいのです。制作をしているときだけではなく完成した作品にもその持続を願います。完成への一つの大きな生成が終わってもなお、顕われてこなくてはいけない。そうでないと死んでしまう。わたしは今にも生まれようとするその姿を見る。見せてください。そうするとわたしは生きるのです。
内藤礼
2018.8 ? 2019.9
『空を見てよかった』より抜粋
本展で発表される《color beginning》は、紙に赤の色鉛筆で描いたシリーズ《namenlos/Licht》(1993年〜)の流れを汲んで2005年から始まり、色彩の新たな発見から始まった絵画シリーズ《無題》(2006年〜)との繋がりをもつ作品でもあります。生気の顕われである色彩は、絵画が受けとめる光によって、奥行きをこえて自由にキャンバスそのものの手前と奥を行き来します。鑑賞する私たちの視線もまた、顕われては消え、消えては顕われる色彩に導かれるように移ろいながら、心を通して光と色彩、生とが一体となり顕われる経験をします。それは、人間の初動である驚きを持った純粋な発見、生の外と内とを行き来する体験でもあります。こうした作品における生の外と内の境界は、近年さらにささやかで分かちがたいものとなり、絵画が内包する矩形や物質性といった枠組みを軽やかに越えて、作品自体がその限られた定義から解き放たれていくようです。
生の外と内をめぐる自由で純粋な連続性は、ギャラリーの窓から差し込む光により、刻々と変化する空間作品(インスタレーション)ひとつひとつへとひろがります。それらの作品は、世界には私たちに打ち明けられることのない秘密、眺めていない束の間に存在する生の瞬間が確かに在ることを、ただそこに在ることで示しています。空から空間に流れ込む陽光を映しながら、その変容をひたすら見つめ、生の顕われをじっと待つ作品群もまた、訪れる人たちとともに、六本木という都市の隙間で生滅の連なりをあらわす情景となります。
世界、存在、生、空間、時間、太陽、空との対話、つくることの意味、人間の初動を見つめ続ける作家によって、今回どのような光景が顕われてくるのか、是非この機会にご高覧ください。
内藤礼は1961年広島県生まれ。現在東京を拠点に活動。1985年武蔵野美術大学造形学部視覚伝達デザイン学科卒業。1991年、佐賀町エキジビット・スペースで発表した「地上にひとつの場所を」で注目を集め、1997年には第47回ベネチア・ビエンナーレ国際美術展の日本館にて同作品を展示。「地上に存在することは、それ自体、祝福であるのか」を一貫したテーマとした作品を手がけている。これまでの主な個展に「みごとに晴れて訪れるを待て」国立国際美術館(大阪、1995年)、「Being Called」フランクフルト近代美術館企画、カルメル会修道院(フランクフルト、1997年)、「すべて動物は、世界の内にちょうど水の中に水があるように存在している」神奈川県立近代美術館 鎌倉(神奈川、2009年)、「信の感情」東京都庭園美術館(東京、2014年)、「信の感情」パリ日本文化会館(パリ、2017年)、「Two Lives」テルアビブ美術館(テルアビブ、2017年)、「明るい地上には あなたの姿が見える」水戸芸術館現代美術ギャラリー(茨城、2018年)、「うつしあう創造」」金沢21世紀美術館(石川、2020年)がある。パーマネント作品に、《このことを》家プロジェクト「きんざ」(香川、2001年)、《母型》豊島美術館(香川、2010年)。受賞に、日本現代藝術奨励賞(インスタレーション部門、1994年)、第一回アサヒビール芸術賞(2003年)、第60回毎日芸術賞(2019年)、第69回芸術選奨文部科学大臣賞(美術部門、2019年)。