イベント紹介Event Information
1966年から71年頃まで静岡を拠点に活動する作家で構成されたグループ「幻触」の中核的メンバーであり、昨年10月22日に惜しまれながら亡くなった美術家・飯田昭二の軌跡を辿る回顧展を開催いたします。
鎌倉画廊での2005年「幻触」展をはじめ、2014年「幻触」の先にあるもの展、2016年re-「幻触」展と開催してきた多くの資料の中に、詩的な言葉が綴られた飯田による1枚の手記を見つけました。
鏡に映る私に向かって「君は私だ。」と言うと、「私は君ではない。」と鏡の私は答える。
では「鏡の私は一体誰だ。」と問う。
すると「私は君ではないのだから、私でもないのだよ」と答えた。
では私とは誰なのだろう。
1960年代は鏡の中の私との限りない対話の時間でした。
飯田は当時、戦後日本の前衛的な作家たちの舞台となった読売アンデパンダン展に出品(1954?56)、また美術評論家の石子順造や様々な美術家との出会いを通して活動の幅を広げ、グループ幻触展(1967 静岡県民会館)や伝説的な展覧会「トリックス・アンド・ヴィジョン—盗まれた眼」(1968 東京画廊・村松画廊)などで発表。「見ること」と「在ること」の間にある矛盾、そこから生まれる「虚」と「実」を、鳥かごと鏡を用いたトリッキーな作品「Half and Half」のシリーズなどで提示し注目を集めます。山で木を縦半分や横半分に切り、半分は山に残し半分は展示会場で展示する「トランスマイグレーション」(1969)など、その後も独創的な作品の数々を発表し続けてきました。高松次郎や後に「もの派」として知られる李禹煥、関根伸夫などの先駆的な創作活動が拮抗するなか、飯田昭二もまた、日本現代美術の大きな転換期を担った重要な作家の一人と言えます。
今展では、巨大な布に地球の表皮をこすり出した(すなわち地面を拓本採りした)全長約 26mの「地表図」(2004?2006)など、近代化と転変し続ける時代の中で自然や物質に対する飯田独自の根源的な感性と視点が反映された作品群、20点以上を一堂に集め展示致します。是非ご高覧下さい。