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金沢21世紀美術館にて、「ぎこちない会話への対応策ー第三波フェミニズムの視点で」が2021年10月16日〜2022年3月13日の期間中、開催されます。

本展覧会は、ゲストキュレーターのアーティスト・長島有里枝が、1990年代以降に活動を始めた10作家の作品について、フェミニズムの視点から新たな解釈可能性を見いだす試みです。 93年のデビュー以来、長島は、自身を含む同世代の女性写真家をくくった「女の子写真」とい うカテゴリーに疑問を持ちながら、作品制作と執筆活動を続けてきました。80年代のメディアが喧伝した揶揄的なフェミニスト像に違和感を持っていた若い長島は、「フェミニスト」と自称することを避けつつも、常に男性中心主義的な価値観への問題提起を作品にしてきました。当時の若者のフェミニズム的実践を見えにくくしたそのような態度は、日本における第三波フェミニズムの一つのあり方であったと考える長島は、「運動」や「連帯」の形を取ってこなかった作家たちの作品にもその要素が見いだせるのではないかといいます。このような考察に基づき、 長島が9名の作家との対話を経て選んだ作品をご紹介いたします。 目の前の状況に対応するために生み出される様々な実践を、バリエーションに富む作品の中に見いだす機会となれば幸いです。

展覧会の特徴
アーティスト長島有里枝をゲストキュレーターに迎えた展覧会
本展は、アーティストの長島有里枝をゲストキュレーターに迎え、1990年代以降に活動を始めた長島を含む現代作家10名の作品について、第三波フェミニズムの視点から、新しい解釈の可能性を探る展覧会です。長島は、大学在学中の1993年に写真家としてデビュー後、自身のコミュニティやジェンダーをテーマとした作品を数多く発表してきました。また、2020年には、女性を中心に興った1990年代の写真潮流を当事者の立場から検証した『「僕ら」の「女の子写真」からわたしたちのガーリーフォトへ』(大福書林、2020)を上梓し、話題になりました。本展では、長島が採用するフェミニズム的視座によって、自身を含む現代作家10名の作品に新しい解釈可能性をもたらすことを試みます。

第三波フェミニズム運動と作家たち
1990年代、音楽やファッションなどのユース・カルチャーを介して欧米から日本に広がった第三波フェミニズムの潮流は、女性たちに新しい自己表現のあり方を提示し、自ら声をあげることを積極的に促しました。一方、1990年代半ば、若手女性写真家の作品に対し使用された「女の子写真」というカテゴリーのように、発言力を持つ論客たちの男性中心主義的な言説がそれをかき消し、彼らを喜ばせるための表現にわい小化した状況があったと長島は指摘します(註1)。「フェミニスト」を表立って自称することは避けつつ、社会における女性の立場には違和感を抱いていた同時代の女性作家たちは、その状況に対しどのような対応策を作品として提示してきたのか。また、自分はフェミニストか否かを問う契機を得てこなかった男性作家たちの作品は、そもそもフェミニズムと関わりを持っているのか、そうであるならばどのような関係性を築いていると言えるのか。声高には語られてはこなかった作家たちの企図を、作品に読み解きます。
(註1)長島有里枝『「僕ら」の「女の子写真」からわたしたちのガーリーフォトへ』大福書林、2020年

多様な作品背景をフェミニズムの視点から読み解く
本展は、1990年代以降活動を開始した現代作家10名の作品で構成され、表現メディアは写真、立体、映像、インスタレーションなど多岐にわたります。ゲストキュレーターの長島は、作家自身がフェミニストを自認しているか、またフェミニズムについて顕在的に作品化しているかどうかにかかわらず、フェミニズムに親和的であると解釈可能な作品を制作してきた作家に参加を依頼しました。長島が作家たちと深い対話を重ねて選び抜いた作品群は、ジェンダーだけでなく、家族、アイデンティティ、エスニシティ、社会規範、伝統的価値観や慣習など、フェミニズムの概念と密接な関わりのある複雑で多様な要素を、各々の作品背景としています。これらの作品をフェミニズムの視点から見ると、どのような作品世界が浮かび上がるのかを考えます。

ゲストキュレーター
長島有里枝 (ながしま ゆりえ)
1973年東京都生まれ。武蔵野美術大学在学中に公募展を経てデビュー、カリフォルニア芸術大学MFA修了。2011年、武蔵大学大学院に社会人枠で入学し、フェミニズムを学ぶ。 写真集『PASTIME PARADISE』で第26回木村伊兵衛写真賞受賞。短編集『背中の記憶』で第23回三島由紀夫賞ノミネート、第26回講談社エッセイ賞受賞。第36回写真の町東川賞国内作家賞受賞。アーティストとして活動する一方、文芸誌や新聞への寄稿、大学で講師を務めるなど、活躍は多岐にわたる。主な著作に『「僕ら」の「女の子写真」からわたしたちのガーリーフォトへ 』(2020) 、 主な作品集に 『Self – Portraits』(2020)などがある。

出品作家 (五十音順)
岩根愛　IWANE Ai
木村友紀　KIMURA Yuki
小林耕平　KOBAYASHI Kohei
さとうりさ　SATO Risa
ミヨ・スティーブンス-ガンダーラ Miyo STEVENS-GANDARA
長島有里枝　NAGASHIMA Yurie
潘逸舟　HAN Ishu
藤岡亜弥　FUJIOKA Aya
ミヤギフトシ　MIYAGI Futoshi
渡辺豪　WATANABE Go

2021/10/16 - 2022/03/13

休場日：月曜日(ただし11月1日、11月22日、2022年1月3日、1月10日は開場)、 11月24日(水)、12月29日(水)~2022年1月1日(土・祝)、1月4日(火)、1月11日(火)
開場時間：10:00~18:00(金・土曜日は20:00まで) ※観覧券販売は閉場の30分前まで

金沢21世紀美術館
石川県金沢市広坂1-2-1

出品作家：10名(出品点数25点)
料金：一般 1,200円(1,000円)/ 大学生 800円(600円) 小中高生 400円(300円)/ 65歳以上の方 1,000円
※( )内は団体料金(20名以上)及びウェブチケット料金
※本展観覧券は同時開催中の「フェミニズムズ / FEMINISMS」(10月16日~2022年3月13日)との共通観覧券です。
※入場当日に限り、「コレクション展1 Inner Cosmology」(11月3日まで)及び「コレクション展2 BLUE」(11月20日~2022年3月13日)にもご入場いただけます。
日時指定ウェブチケット：購入開始日 2021年9月27日(月)10:00~
日時指定ウェブチケット：購入方法 金沢21世紀美術館ウェブサイトよりご購入いただけます。
主催：金沢21世紀美術館[公益財団法人金沢芸術創造財団]
ゲストキュレーター：長島有里枝
お問合せ：金沢21世紀美術館 TEL:076-220-2800

[オフィシャルサイト]
https://www.kanazawa21.jp/data_list.php?g=17&d=1796