蘇笑柏(ス・シャオバイ) 「無時無刻─ いつ、いかなる時も─」

イベント紹介
Event Information

2018 年 10 月 12 日より、1949 年生まれの中国籍抽象美術家・蘇笑柏(ス・シャオバイ)の大型個展「無時無刻─ いつ、いかなる時も─蘇笑柏展」が、初めて日本で開催されます。財団法人耿芸術文化基金会が主催する本展は、西日本最大級の規模を誇る兵庫県立美術館で、2018 年 10 月 12 日(金)から 11 月 28 日 (水)にかけて行われます。未発表作 25 点のうち、半数近くが新作であり、中国の伝統的マテリアル「生漆」で描かれた《洒脱》(2017)、《拂水―夏》(2018)、《拂水―秋》(2018)、《拂水―冬》(2018)をメインに発表。またそのうちの大半は、2 メートルに達する大作となります。
蘇は歴史ある素材「生漆」を生かした技法や実験的な方法を駆使しながら、アートという言葉をもってマテリアルと絵画との対話を引き出しています。時の積み重ねによって生まれたレイヤーとマチエールは、蘇の構想という下地の表れであり、“裏衣(衣を纏う)”や“脱胎(生まれ変わる)”といった創作のプロセスをも示しています。言い換えれば、物質たるものが自然の変化に順応するなかで、生成していくそのランダム性や自由を露わにしているのです。
1949 年中国の湖北省武漢市に生まれた蘇笑柏は、中央美術学院油絵研修コースで画技を学び、アカデミ ック美術の系譜を汲んだリアリズムを会得したことによって、基礎を固めました。1987 年、蘇はドイツのノルトライン=ヴェストファーレン州が交付する奨学金を受け、国立デュッセルドルフ美術アカデミ ーの研究生を経て、マイスター課程で更なる研鑽を積みます。また、恩師との深い交流、スクールメイトとの切磋琢磨を通じて、モダニズムや現代美術にインスパイアされ、より抽象度の高い言語空間に心惹かれたことで、表現の幅を広げ、新たな可能性を切り拓いていきました。リアルな具象から離れ、抽象絵画へと移行した蘇は「抽象画のなかに丁寧に封じ込めてしまうものこそ、私が伝えたい内容である」と語っています。
蘇が 90 年代初期に手がけた油画作品から、具象の「物」をもって、ポエティックな記号や概念を浮かび立たせようとしていたことが見てとれます。すなわち、彼は瞑想という境地を描き出そうと試みていました。その後、「物質」をとりまく無限の可能性について、思考を巡らせ、探究し、悟りを開くことが、蘇の創作そのものとなっていきます。「長い間、画面の上に現れる具体的な形象(≒イメージ)について、関心を抱かなくなった。ここでいう形象とは、ある種の内容を表現するための姿かたちです。形象という言葉を必ず使わなければならない時でも、形象と形体に対し、私は違う理解を持っています。例えば色彩と、絵画の芯に使われている板の構造」と作家本人も述べています。漆芸に着眼し始めた 2004 年は、蘇笑柏の転換期でした。「生漆」とは千年以上も前から中国で使われてきた古い素材であり、福建省が最も有名な産地です。漆というメディウムを研鑽していくなかで、蘇は古代漆器の制作過程の一環、麻を用いた布着せに深く魅了されます。このような特殊工程を経て、一層一層重ねられていく漆は、色彩の原始的な様態をも表し、物自体が持つイメージの質をえぐり出していく作家の関心と相通じるものがあります。それは材料に人為的な主観概念を付与した美学では決してありません。
本展のタイトル“無時無刻”とは、反芻し、温め、構想するといった一連の創作プロセスを表わしています。蘇にとって何かをクリエイトするとは、ただアトリエの中で行われる営みではなく、顔料を塗り重ね仕上げていく時だけが、創作プロセスというわけではありません。長い時間を費やして考え、漆が持つ物質的特性、独自の処理法をビジュアル言語に置き換えていくと同時に、物質のなかで起きる有機的な活動、または予期せぬ不規則性をも抱え込むことで、作品が最終的に行き着く先を、人力の成し得るところではなく、自然の流れに委ねているのです。蘇は木板とエマルジョンをもって、成型をし、何層にも重なる麻布を張り合わせ、同じ面の上から漆を塗り重ねていく。運動と拡張を繰り返すなかでマチエールがつくり出されるのです。漆の色彩は絶え間なく浮遊し、変化し続け、時には衝突を生み、また調和へと回帰していく。作家自身も、絵が完成するタイミング、その頃合いを見計ることができず、生漆、油彩、エマルジョン、麻布といったものたちにも、各々生命と活力があるかのように、それらはただ不断に変わり動き、組み直され、移り変わり、引っ張り合うなかで反響を巻き起こしているのです。「私に出来ることは何もない、ありとあらゆる手を尽くした。いつ、いかなる時も、どんな時でも、私がクリエイトしているのは、ただの一つの状態でしかない」と本人は言います。
本展は、世界的建築家として知られる安藤忠雄氏が設計を手がけた、西日本最大級の規模を誇る兵庫県立美術館で開催します。また、同館の蓑豊館長は、長年にわたり磁州窯の研究に精を尽くし、中華圏の文化に対する造詣を極めたうえ、美術における開けた多元的な視野を持つ博識者です。同じく安藤氏によるランゲン・ファンデーション(ドイツ)で、2010 年に展覧会を果たした蘇笑柏は、日本でも最新シリーズを展開すべく、時を経て縁ある兵庫県立美術館で「無時無刻─いつ、いかなる時も─ 蘇笑柏展」を発表する運びとなりました。展示空間の設計は、かつて安藤忠雄建築研究所に勤め、現在はプロダクトから都市まで分野を横断した建築活動を行う、ノイズの豊田啓介氏によるものです。2014 年、2016 年のタイアップに続き、今回も兵庫県立美術館という空間のなかで、素材と対話するアートが繰り広げられることでしょう。

アーティスト
Artist

蘇笑柏

スケジュール
Schedule

2018年10月12日(金) - 2018年11月28日(水)
[開館時間]
10:00-18:00
金•土曜日は8:00 p.mまで。ただし10/19、20、26を除く。
※入場は閉館の30分前まで
[休館日]
月曜日(祝休日の場合は翌日)

開催場所
Place

兵庫県立美術館
兵庫県神戸市中央区脇浜海岸通1-1-1 

その他概要
Outline

蘇笑柏(ス・シャオバイ)について
1949 年中国の湖北省武漢市に生まれた蘇笑柏は、中央美術学院油絵研修コースで画技を修得。1987 年、ドイツのノルトライン=ヴェストファーレン州が交付する奨学金を受け、国立デュッセルドルフ美術アカデミーの研究生を経て、マイスター課程で更なる研鑽を積んだ。
[オフィシャルサイト]
https://www.artm.pref.hyogo.jp/exhibition/index.html
蘇笑柏(ス・シャオバイ) 「無時無刻─ いつ、いかなる時も─」